2012年12月29日土曜日

読書感想文集前書き


昨年度の本校の読書感想文集の前書きに寄せた文章です。
もう一年経ったのでブログで公開させていただきます。

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永く付き合える本

私は小中高を通して国語が苦手でした。「これではいけない」と、いろいろな
本を読んで国語力をつけよう、と努力はしたのですが、こういう不純な動機で
はやはり身につくことはあまり無かったようです。ただ、そんな乏しい読書体
験でも何とはなく、後々まで記憶に残る本はあるようで、特に印象に残ったの
は中島敦の「名人伝」という小品です。これは天下一の弓の名人になろうとい
う志を持った男の話です。修行を重ね、ついには師匠と互角の腕になった男は、
師匠から

「自分たちの技など、子どものあそびに等しい、と言うほどの弓の名人が深い
山の中にいる」

と聞いて居ても立ってもいられず、その名人に会いに行きます。そこで男は弓
の真髄を見せつけられ、改めてこの名人の下で修業を重ねます。やがて、修行
を終えて街に帰った男は、周りの期待にもかかわらず、いつまで経ってもその
技を見せようとはしません。それどころか・・・(結論が気になる方は、ぜひ
ご覧になってくだい。中島敦の作品は現在著作権が切れており、インターネッ
ト上の「青空文庫」等にアップロードされていますので、すぐに見ることが出
来ます。)

このお話には、はっきりとした教訓があるとか、何かの役に立つ情報がある、
ということは全くないのですが、何故か今でも時々、突然気にかかって、何十
年も前に購入した文庫本を読み返しています。不思議なことに読み返すたびに
何か新しい発見があり、うれしい気持ちにしてくれます。なお、この作品の中
でも私が特に気に入っている部分は、初めて主人公の前に初め表した名人の姿
を描写した部分です。その部分を少しだけ紹介しますね:

気負い立つ紀昌を迎えたのは、羊のような柔和な目をした、しかし酷くよぼよぼの爺さんである。年齢は百歳をも超えていよう。腰の曲っているせいもあって、白髯は歩く時も地に曳きずっている。

・・・どうです、「いいなあ」と思いませんか。

人生で「永く付き合える本」というのは、やはり良いものだ、と思いますが、このような本には、皆さんのような若い時にしか出会えないように感じています。皆さんも、それぞれ「永く付き合える本」にめぐり合えれば良いな、と思います。

気をつけるべきこと

数学でもそうですが、ある成果を苦労して作り上げた人は
その難しさや、問題の微妙な所をよく知っている。
だから、自分の後に続く若手たちが、あまり、深く考えずに
その結果を使うことがとても、気にかかるして、時としては
親切心から、その若手にアドバイスをしたくなる・・・
しかし、多くの場合、当の若手にとっては、年寄りの自慢話
くらいにしか、聞こえない・・・なんてことがあるのでは
ないでしょうか。
一方で
若手の人たちは、年寄りの作り上げた結果を、その結果
だけを見て、そして年寄りには思いもよらなかったような
使い方を見つけ出す・・・と言うこともある。

私は若者の発想を大切にすべきと思うし、少なくとも
若者が前に進むための重荷や、邪魔者にはならないように
気をつけたい、そしてもし若者の役に立ちたい、と思うなら
対等な研究者として協力関係になるようにしたい・・・

等という考えが突然頭に浮かんできました。

2012年12月27日木曜日

数学への応援歌(森元氏の投稿)

森元予想

http://fuzokukouchou.blogspot.jp/2012/05/blog-post_08.html

を提案された森元氏が研究者のためのメーリングリストに次のような
投稿をされています。ご本人の許可が得られましたのでここに転載
させていただきます。

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風向き


結び目理論関係者の皆様
 
 今週、早稲田大学での「結び目の数学V」に出席しました。集会は若い学生さんや研究者で賑わっており、とても盛況でした。その懇親会における冒頭の挨拶で、河内明夫先生が、「結び目理論は様々な数学を巻き込み、自然科学とも深く関わり、今後100年は発展し続けるでしょう」と力強く宣言されておりました。もちろん、若い人々を勇気づけ激励する意味もありますが、ここ最近、数学を取り巻く環境や風向きが、少しずつ良くなってきたと感じております。
 というのは、1990年代後半から10年余り、情報科学の急激な発達と、学問よりも実学重視の風潮を受け、いくつかの大学で数学科が縮小や廃止され、教員のポジションも削減されました。そして数学は「忘れられた科学」という名で呼ばれるなど、若い人々が数学に夢を持てない状況が広がっていました。私はそのような状況を表した文章を、「数学の本丸と外堀」と題して、メーリングリストに投稿しました。つまり、中堅大学という外堀が埋められ、数学ができるのは東大・京大を中心とする本丸とその周辺のみとなり、いずれ孤立し発展が妨げられるというシナリオです。
 当時、ある有名な先生は「数学はいずれ文化庁に保護されなければ存続できなくなるかもしれない」などとぼやいておられ、私は、奈良女子大学の小林毅さんと「今は逆風の中打って出るときではなく、火を消さないように守るときだ」などと言っておりました。ところが、各企業がコンピュータを使える人材を渇望した時代が終わり、誰でも使えるのが当たり前という時代になると、より高いものが求められるようになり、物事を根本から考えることができる人材が求められるようになりました。それは汎用性のある人材であり、まさに、数学の考え方です。そして、このような要求が企業の方から出てきていることが、数学への追い風となります。
 数学を学んだ人が、教員や研究者だけでなく、技術やビジネス、福祉、さらには政治でも活躍することにより、社会全体が数学を学んだ人は多方面で活躍できるという認識を持つようになると思います。数学だけを発展させるのであれば、一部の天才的な人だけでよいかもしれませんが、幅広く社会に浸透し、多くの人々に文化として支持され、発展させるためには、数学力のある人こそ有用な人材であるということが、広く知れ渡る必要があるでしょう。数学を学び、その普遍性を身につけ、一方で時代の変化に柔軟に対応し多方面で必要とされる人材こそが、これからの数学人の一つの姿であり、先日集まった若い人々に、その可能性を十分に感じることができました。
 どうぞみなさん、本丸から外堀、そして一般社会まで、数学に関わる人々がそれぞれの努力をすることにより、数学の未来を築いていきましょう。そして、少しずつ変わりつつある風向きを、さらにによい方向に向けるよう、来年もがんばりましょう。
 それではよい新年をお迎えください。
 
甲南大学知能情報学部 森元勘治

2012年12月26日水曜日

論文と現実歪曲フィールド

修士論文や博士論文を作成しているときの学生の心理状態というのは
普通の状態ではない、ということは長年感じています。
ただそれがどのような物であるのか表現する、具体的な言葉が
みつからからなかったのですが、それはもしかしたら
「現実歪曲フィールド」
かもしれない、というアイディアが浮かんできました。

現実歪曲というとなにかネガティブなイメージがあるのですが、
例えば、インターネットの世界は、これまで図書館に
いって半日かけて調べなければならなかった事項を、あっと
言う間に調べることを可能にしてくれる、という意味では
「現実歪曲フィールド」が現実になってしまった・・・
といえるでしょう。これなど現実歪曲フィールドが現実
まで昇華されたれいといえます。

数学の新しい結果というのは、他の人が聞いてすぐに理解できる
とうレベルでなされるのではありません。それこそ、それまでの
常識に反するような意外な発想が(原則として)かならず
あるのです。その発想を認めるということは、「現実歪曲フィールド」
をはるという感覚に近いのかもしれません。

現実歪曲フィールド

ウォルター・アイザックソンの「Steve Jobs」が文庫版になっているのを、
見つけて早速購入していま読んでいるところです。その中にJobsの持つ
特性として「現実歪曲フィールド」という言葉が出てきます。
あまり、よい言葉としては使われていないようですが、
例えば次のような場面は、私には好ましく感じられます。

技術者たちが「到底できない」と考えている問題に対して、
Jobsは「こんな方法もあるじゃないか」「あんな方法もあるじゃないか」
と次々提案をして、それを聞いた技術者たちは、「確かにそうだ、
我々はなぜ気がつかなかったのだろう」と、会議が終わる頃には
すっかり問題を解決できる気になる・・・・しかし会議が終わって
頭を冷やしてみると「なぜあれで、できるという気になったのだろう。
本当はやはりできないんじゃないか」と考えてしまう、といものです。

2012年12月25日火曜日

修士論文、博士論文

うちの大学の数学教室は学部の卒業に卒業論文は
必要ありませんが、大学院前期(修士)、大学院後期
(博士)を修了(:大学院を出ることはは「卒業」とはいわず「修了」
と言います)するにはそれぞれ修士論文、博士論文の提出が必要で
それぞれの論文に対して委員会が設置され、その内容を審査して
修士号、博士号を出すのに値するのか、審査します。

論文の提出は博士が1月前半、修士は1月終わりが締め切り
(年によって少しずつ違います)で、この論文の仕上げ
のために修士、博士最終学年の学生は12月
頃から修羅場に突入することになります。
一月に入るとそれこそみんな目の色をかえて、論文にの執筆に
取り組んでおり、過去には大学に泊まり込む学生もいました。

そうやってなんとか完成、提出をすませれば、それで終わり、
という訳ではなく、その後に公聴会(概ね2月の上旬から中頃
に実施)があり、自分の書いた論文の内容について、
非専門家も含めた人たち向けにプレゼンテーションをする
必要があります。この準備がまた大変で、何度も内容を
検討して、練習をして・・・公聴会をむかえます。


2012年11月26日月曜日

海外高校生向け暗号講座(4)


You might wonder that if this is the strongest cipher., then there is 
nothing to study anymore.
But there is still a problem. 

By the way I would like to emphasize an important principle
in the theory of cipher. That is:

The security of a cipher must not depend on keeping secret the algorithm. 
 The security depends only on keeping secret the key.  
(The security of a cipher must be discusses on the assumption that 
the code breakers know the algorithm.)

OK. Let's go back to the problem that we are facing. 

The problem is that the sender and receiver have to agree with 
the same key before using the cipher.
The sender must send the key to the receiver, but the enemy will see it.
So the cipher is not safe anymore.
This is the problem, and it is called Key Distribution Problem. 

2012年11月25日日曜日

海外高校生向け暗号講座(3)


Let me explain with using a concrete example.
First, this is the list of the Caesar Ciphers used in Vigenere Cipher.

Each alphabet represent one of the Caesar Ciphers.
For example, the alphabet “a” represents the Caesar Cipher with zero 
shifts, that means that the alphabets are not changed at all.
The alphabet “b” represents the Caesar Cipher with one shift, that 
means that “a” is substituted with “b”, “b” is substituted with “c”, and so son.
The alphabet “c” represents the Caesar Cipher with two shifts like this, and so on.

Now I will show you how the sentence “this is a pen” is ciphered with the key “age”.
The first line represents the plain text “this is a pen”.
The second line is the repetetion of the key.
Then the cipher text is obtained by substituting each alphabet in the plain text 
by using the Caesar Cipher designated just below the character. 
As the conclusion,  we obtain the cipher text:    tnmsowavin

It is known that Vigenere Cipher is the ultimate cipher, that is, it is impossible 
to break it if it is properly used, where "properly used" means that you have 
to use a very long key consisting of random alphabets.  


2012年11月20日火曜日

海外高校生向け暗号講座(2)


Caesar Cipher can be generalized in such way that one substitutes wach letter with another.
This kind of ciphers are called substitution cipher.


But these kind of ciphers were broken, by well trained code breakers.
In fact, they use a method called frequency analysis.

So, they have to find a new cipher algorithm to keep the security of sending messages. 

The breakthrough was achieved by a French diplomat, Blaise de Vigenere, in 16th. Century.
The algorithm used the Caesar Ciphers (not only one, but all possible Caesar ciphers).
The significant idea is to change the Caesar Ciphers according to a key, whichi is given by a sequence of alphabets. 






2012年11月19日月曜日

海外高校生向け暗号授業


先日日本を訪問中のマレーシアの高校生向けに
模擬授業を行いました.


On Mathematics in Cryptography

Ciphers are techniques for hiding the meaning of a message that only
the your co-worker can read it.
For example, you want to send a message to your friend with
writing it on a card. Imagine the situation that you have send
with helps of some other students. They can see it, when they take
it from the previous student.
This is something that you would like to avoid.

So what can you do ?
Well, one thing you can do it to change message according to a rule that
you and your friend agreed with.
This kind of technique is generally called cryptography, and each rule is
called a cipher.


Let me introduce some more technical terms.
The sentence that you would like to hide is called a plain text.
By applying an encryption algorithm on the plain text, you can obtain a
cipher text.
We note that this process requires not only an encryption algorithm but
also an extra information called key
The text will be sent to your friend, that is an appropriate receiver.
The cipher text may be intercepted by an enemy.
But the enemy will not be able to decipher it, because they do not know
how to do it.
Your friend will decipher it to obtain the original plain text with using the
algorithm and a that  you and he have already agreed with.

Here is an example of a cipher.
Julius Caeser, a general of the Roman Empire used a cipher using the
algorithm that shifts the alphabet three times.
For example this plain text “this is a pen” is ciphered to “wklv lv d shq”
Well some of you may see how can get variety of Caesar ciphers by
changing the numbers of shifts among 1 to 25.
In this case the algorithm is the rule to change each alphabet by shifts,
and the key is the number of shifts that are applied to each alphabet.
(As you can guess, this is a weak algorithm.)

師の走る11月

11月は大学関連の様々な行事が有ります.

まず学園祭開催日に実施する「サイエンスオープンラボ」
それから,まほろばけいはんな科学ネットワークで実施
するけいはんな学園都市の研究所見学会(今年は,
女子中高生のための関西科学塾の企画として実施しました.)
それから,附属の公開研究会等々.
まあ好きでやっていることなので,文句をいう筋合いは
無いのですが・・・今年はちょうどこの時期に風邪を引いて
しまい,危うく沢山の人に迷惑をかけるところでした.

2012年11月6日火曜日

線形と指数

数が次々と増加してゆく様子について考えます.
例えば
1,2,3,・・・
とか
2,4,6,・・・,や
3,6,9,・・・
のようなものです.
ここであげたように2回目は,2倍,3回目は3倍というように,
何回目の回数と,数が比例しています.
このように変化する数のことを線形的増大といいます.
これに対して
2,4,8,・・・・
とから
3,9,27,・・・・
のように1以上の数(:Cと書くことにします)が
あって2回目はCを2回かけたもの,3回目はCを三回かけたもの
(上の例ではCは2と3です)に成っているようなものを
指数的増加呼びます.
数学の世界では,ものが線形的に増加するときと,指数的に増加する
時に決定的な差が生じます.

2012年11月4日日曜日

ちょっとした気にかかること

オカリナの音が好きでYouYubeで色々な人の演奏を探して
楽しんでいます.YouTubeではプロの演奏より,むしろ
素人(と言うにはレベルが高すぎるのですが)の
演奏が心地良く聞こえることが多いように思います.
私がよく聞かせてもらっている方の演奏(曲名:
ケ・セラ・セラ)を聞いていてちょっと気にかかることが
有りました.

http://www.youtube.com/watch?v=qTci6kRqYk8

とても素直に音が繋がってゆく,心地良いメロディ
と技巧を凝らすわけでもない素朴とも感じられる
素直な演奏がとても心地よく感じられます.

所でこのビデオの24秒から27秒にかけて,
ファソラソ しど
と音が動くところなのですが,この「しど」の間で
全く指が動いていないようにみえます.
音はちゃんと「しど」鳴っているように聞こえるので
すが・・・

可能性としては
◯実際にはビデオで見えていない部分で指が
動いている
◯本当に指は動いていないが,息の微妙な変化で
半音の変化を実現している
というところでしょうか.

試しに自分で同じように吹いてみると,音感の無い
者の悲しさで,確かに指を動かさなくても,音が
変化するようにも聞こえるし,そうでないようにも
聞こえる・・・という状態でますます混乱しています.


2012年11月3日土曜日

サイエンスオープンラボ開催中

本日と,明日サイエンスオープンラボで一般の方々向けの
企画を実施しています.
今年も沢山の方に来場いただいています.
写真はストローと輪ゴムを使って正多面体を作る体験の
様子です.

2012年11月2日金曜日

今年もサイエンスオープンラボ

理学部では学部共通科目の「サイエンス・オープンラボ」を開講して
います.これは理学部の各学部の学生たちが,自分たちの専門に
関連した話題を一般の方々に分かりやすく解説するという催しを
自分たちで企画・実施することを通して,コミュニケーション力
やリーダーとしての資質を身につけることを目的にするものです.

今年も明日(3日),明後日(4日)の2日間大学を会場の企画を
実施します.写真は手作りのペントミノパズルを準備している
学生の姿です.


私はこの授業には,立ち上がりの時からずっと関わっていますが
学生たちの素晴らしい発想には毎年驚かされます.

2012年10月19日金曜日

トンボの羽

大学の階段に,標本状態でトンボが死んでいるのを見つけました.
前の投稿で書いたトンボの羽の特性の話がしっかり頭に
残っていたので早速,資料として研究室に持ち帰りました.
(写真の右下のトンボは絵ではなくて,実物です.)

石田先生のウェブにも書かれていたように,断面が非常に特徴的な
形をしているのがちゃんと見て取れました.それ以外にも手で触ると
非常にザラザラした質感であることがわかりました.この年になって
もこういう発見は嬉しいものです.

ザラザラした感触で,

2012年10月16日火曜日

石田先生の本を購入しました

SSH基礎講座に来てくださった石田先生の本を早速アマゾンで
購入,昨日届きました.

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%A4%E3%83%A2%E3%83%AA%E3%81%AE%E6%8C%87%E3%81%8B%E3%82%89%E4%B8%8D%E6%80%9D%E8%AD%B0%E3%81%AA%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%97-%E6%9D%BE%E7%94%B0-%E7%B4%A0%E5%AD%90/dp/4752005514

自然に学ぶネイチャーテクノロジーを
たくさんのイラストで解説している,とても楽しい本です.

取り扱っている話題には,講座の中で出てきた,蓮の葉,
トンボの羽,ハコフグの骨格,ヤモリの足,等の他に
以前から興味のあった構造色のおはなしも出てきていました.

振り返ってみると,私が物心ついたころは,原子力は
夢のエネルギーで,宇宙開発は科学の発達の象徴...
と脳天気に科学の発展を正義と多くの人達が信じていた
ように思います.その後公害問題を契機に科学の発展に
疑問が投げかけられるようになって,やがて倫理,哲学を
巻き込んだ混沌の世界に変わっていく,....
私自身はそのような科学観の変遷とともに成長してきた
のだな,と思います.正直「科学は大切」と生徒たちに訴える
ことにためらいを感じる所もあります.

私にとって
科学の位置にかんする捉え方を変えてくれる,そして
元気をそんな本だと思います.

2012年10月15日月曜日

サイエンス基礎講座のなかの話題から

10月11日にサSSHイエンス基礎講座が行われました.
様々な方面で色々なことを考えさせてくれる,そして
たのしい講座でした.
講師は東北大学大学院環境科学研究科の石田先生.
一見したところ,環境問題をテーマにした講演のように
見えますが,実際のところは政治や社会のあり方に
関するおはなしであったと思います.

お話の端々で「わくわくどきどきしたいでしょ」という
問いかけがありました.なにか,私自身が忘れていたもの
を思い出させてくれたような気がします.

おはなしで取り扱われたトピックの一つにトンボの羽
の話がありました.
トンボがなぜあれほど低速に飛べるのか,という問題
の解答が最近わかったというのですが(詳しくは

http://www.nature-sugoi.net/topics/t3/page1.html

を御覧ください.)学問的には低レイノルズ数の流体力学
の研究,ということに(多分)なるのだと思いますが
このあたりの研究はまだ殆どなされていないとのこと...
これって先日の始業式で失敗に終わったウォークアロング
グライダーの世界の話です.

そういえば,質問していた生徒の中にこれに関する工作
(弱い風で動く風車)をつくってみようという生徒がいました.

私も,やりたい・・・

2012年10月7日日曜日

F1日本GP開幕(3)

このようにホンダ第2期F1活動期は、レースという戦いの
場を情報化、ハイテク化した時代であると言えるわけですが、
セナはその先端に関わりつつ、またその限界も示してくれました。

伝統的な、自動車のアクセル系は足元のアクセルから機械的に
ロッドやワイヤーがつながっていてそれがエンジンまで繋がっ
ている関係上その配置には、どうしても制限がついていました。
ところで、最近飛行機ではアクセルは単なる電気的なボリューム
になっており、その信号を電気的にエンジンに伝える配線は
自由に配置できます(フライバイワイヤ方式)。そこでF1にも
このフライバイワイヤ方式が取り入れられるようになったのですが
セナのアクセルワークはあまりに素早くまた微妙であったため
配線内のノイズと認識されることがありました。
このような誤認識をなくすためにホンダの技術者は大変な
苦労をしたということです。

私はこのような話が大好きで、感動すら覚えます。
あらゆる可能な技術を投入したマシンと、そして
なおその限界を明らかにしてくれる人間の能力。
私がレースに期待しているのはこのようなテクノロジーと
人間の感性の高度な融合なのだな、と思います。

あまりにハイテク化が進んだF1はその開発に巨額の資金を
要するようになります。1994年にこのような状況を改めるための
第一歩として、アクティブサスペンションが禁止されます。
これは車の走行状態をセンサーで感知し、それをコンピュターで
解析してそれに基づき車の最適な状態(前後左右の傾きなど)
を制御するというシステムです。当時のF1カーは特に流体力学に
基づいた空力ボディーの開発が進んでいました。このような
車は姿勢がある(狭い)範囲の中に収まっているときは
ずば抜けた速さを発揮する反面、その範囲を外れるとまったく
コントラールが効かなくなるという、まさに綱渡り的な
バランスの上に支えられている代物でした。そのような
車から姿勢制御のための仕組みだけを取り除けばどのような
事が起こるかは容易に想像がつくでしょう。
1994年のシーズンは当初から大きな事故が続けて起こり、
深い傷をおうドライバー、そして死亡するドライバーが
続出しました。

そして1994年5月1日のイタリアグランプリで時速300Kmオーバー
でコーナリングを開始したセナの車は突然コントロールを失い
コースを外れ、壁に激突、セナはほぼ即死と言っていい
状態で亡くなったのでした。

この事故のあと私のF1への興味は急速に失われて行きました。

2012年10月6日土曜日

F1日本GP開幕(2)

ホンダエンジンの強さの理由の一つに、レース情報
のシステム化、を揚げることが出来ます。
例えば、レース中にエンジンの状態を無線でピットに
飛ばしてリアルタイムにモニター出来るようにした
テレメトリーシステムはホンダが開発したものです。
後に、この情報は衛星回線を使って日本にある
ホンダの研究所に送られるようになりました。
またエンジンというのは、現在はその点火等の
タイミングはコンピュータ制御されており、
コンピュータのプログラムを変更することにより、
全く性格の異なる
ものにすることが可能です。ホンダはいくつもの
プロウラムを予め準備をしておき、レース中に
無線でこれらのプログラムを交換するような
システムも開発していたそうです。

このホンダの栄光の時代を支えたのが、ブラジル人
ドライバーのアイルトン・セナでした。
セナは単に速く走るだけではなく、次々と
新しいテクノロジーが導入されるF1の世界に
あって、常にそのテクノロジーを理解しよう
とした、ドライバーであったと言われていま
す。常に新しい技術に興味をもち、技術者に
質問をし議論を交わすセナの姿は、一流のドライバー
の中でも、珍しいものであり、ホンダを始め
多くの日本人に好意的に受け入れられました。
(因みに、1994年セナが事故で亡くなったのち、
コンピュータ関係の雑誌ASCIIは、セナの特集
組み、高度にデジタル化されたF1の世界を
描いています。)

2012年10月5日金曜日

F1日本GP開幕

今日からF1日本グランプリが開幕、とのことです。
最近はすっかりご無沙汰していますが、F1GPの全レースが
地上波で放映され始めた1987年から1994年頃まで深夜に
行われる放送にかじりついて、よく寝不足になっていました。

当時はホンダの第2期F1活動期で
技術的にはターボエンジンと自然
吸気エンジンが混在してレースが行われていました。
馬力的に不利な自然吸気エンジンは排気量3000ccまで
認められていたのに対し、ターボエンジンはその半分の
1500ccまでの制限がありました。しかしターボの優位性は
そのハンディをものともせず、当時は優勝争いをするには
ターボエンジンでなければ無理、という状態で、ホンダも
当然、技術的にチャレンジのしがいのあるターボエンジン
で参戦、1986年には個人タイトルは逃したものの、
コンストラクターズのチャンピオンを獲得していました。
1987年は個人、コンストラクターズのダブルタイトルを
狙っての参戦でした。

因みに1986年のホンダエンジンは他のエンジンに比べて
200馬力アドバンテージがあると言われていました。
(1500ccで「200馬力でる」、ではなく200馬力他のメーカーを
上回っていたのです。当時ルノー等他のエンジンが800馬力
で戦っていたのに対して、ホンダエンジンは
1000馬力で本番のレースを戦っていたとのことです。
更に、燃費が問題にならない予選では1400馬力がだせた、
つまりほぼ1ccあたり1馬力出すことができた、という
ことです。)

絶対的な物量をほこるホンダの体制は当時のF1エンジン
は究極の姿を見せてくれたわけですが、その姿は
見ているだけで快感を与えてくれました。
それは早い物、強い物に対する本能的なあこがれ、
を感じさせてくれた、と言っても良いと思います。

2012年9月28日金曜日

今日はコロキウム

「数学の魅力とはなんですか?」
「何のために数学を勉強するのですか?」

という質問を受けることが有ります。

この質問には、色んな意味があって一般的に
答えるのは難しいのですが、あえて一つだけ
答えを揚げるとすると

「数学は、心の自由を獲得するための力に
なるのです」

と言いたいと思います。

2012年9月27日木曜日

ウォークアロンググライダーで宙返り

「ウォークアロンググライダーで宙返りが出来るか」
という考えが突然浮かんできました。
常識的に考えるととても出来る気はしないのですが、
そこで思考停止しては何も始まらない・・・
ちょっとしたパズルのようなものだと思って取り組むと
案外、突破口があるかも・・・

2012年9月26日水曜日

理科の教材

ウォークアロンググライダーにしてもダイナミックソアリングにしても
むかしはこのようなものを作るための材料は手に入らなかった、
もしくは非常に高価であったために子供たち向けの講座で
実施するのはほとんど不可能であったと思います。

ちょっと見回してみると、私たちの周りにはむかしには
とても手に入らなかったような、素材が溢れています。

昔は、プリミティブでその原理がわかるようなおもちゃが
たくさんあって、子供たちの科学する心を刺激してくれていたが
最近の、出来上がったおもちゃで遊ぶだけで、そこに隠れている
原理などを知ることができなくなってきている。
これが、子供たちの理系離れの原因になっているのではないか、
・・・という意見を聞くことが有ります。

思うに、理科に興味を持ってもらうための教材(プリミティブな
おもちゃ)は、新しい素材を利用してやることにより、これまでの
ものとは全くちがうものが出来るのではないでしょうか。

2012年9月24日月曜日

ダイナミックソアリング

グライダーの世界でウォークアロンググライダーとは真逆の
遊び方としてダイナミックソアリングという飛行方法があります。
普通のグライダーはスロープソアリングと言って、斜面に向かって
風が吹きつけているときに生じる上昇気流に乗って長時間フライトします。

いま山に向かって風が吹きつけているとします。この時山の風上に
向かった側では、上に書いたように、上昇気流が生じるわけですがその
反対の側には下降気流が生じています。ここにグライダーを入れることは
普通は絶対にしていけないのですが、ダイナミックソアリングでは
あえてここにグライダーを入れて、巧みなコースを飛行させて
やることによりグライダーを加速させてやるのです。
うまくいくと風速をはるかに超える速度まで加速することができます。

YouTubeに時速446マイル(= 約 710km/h)まで加速した模型グライダー
の映像があげられていました。さすがにこの速度になると、飛行機の
姿は殆ど見えません。

http://www.youtube.com/watch?v=ByOB4luuvy4

「この仕組は、風力を効率よくエネルギーに変える方法に応用できないか」
というアイディアをずっと持っているのですが、・・・
誰か取り組んでみませんか。

*ダイナミックソアリングについては例えば

http://xoomer.virgilio.it/ocapofer/Dynamic-eng.htm

に解説が載っています。

2012年9月23日日曜日

ウォークアロンググライダー(2)

実は,先週東京のあるメジャーなテレビ局の番組を制作している
会社のスタッフの方から,「番組の中でウォークアロンググライダー
について取り扱いたいのだが,・・・」という連絡がありました.

解説の文章,写真や動画を作成してメールで送ったりといろいろやりとり
して場合によっては私も撮影に参加するかも,という話になっていた
のですが,結局今回はウォークアロンググライダーを取り扱うのは
中止となりました.残念.

せっかくなので一連のやり取りのデータを置いておきます.











2012年9月17日月曜日

ウォークアロンググライダー

小学生向けの科学講座で「空気と遊ぼう」という
内容をすることが有ります。ここでは空気砲や、
室内凧等の工作をしながら空気の性質について
学ぶのですが、最後にウォークアロンググライダー
という室内で飛ばす飛行機を作ります。
一枚の板を体の前に立てて前進することで
できる空気の動きを利用して、動力のない
小さな飛行機をとばす、というもので、
実際に飛んでいる姿を見るとちょっと不思議
な感覚です。

ウォークアロンググライダーの考案者は
タイラー・マクレディーという方(初めて
ドーバー海峡を横断した人力飛行機
ゴッサマーコンドルの製作者ポール=マクレディーの息子)
だそうで、父親の人力飛行機の制作の手伝い合間に思い
ついたそうです。
このあたりの事情については

http://www.visualecture.com/wordpress/?p=1091

にご本人の講演があります。(ビデオの18:00あたりから
ウォークアロンググライダーの説明があります。)

ウォークアロンググライダーの原理に関してはyoutube
の動画

http://www.youtube.com/watch?v=jnwc0meV3SI

の2:30辺りから解説されています。
一言で言うと、立てたボードの上にできる
空気のクッションの上にサーフィンの要領
で飛行機が乗っている、
という感じです。

なお、上記の動画はシリーズになっていまして

http://www.youtube.com/watch?v=EGx9FdNZd1w&feature=relmfu
(作り方の解説)

http://www.youtube.com/watch?v=62gKLPUnTsQ&feature=relmfu
(作り方と調整の解説)

http://www.youtube.com/watch?v=7d80Mn8Rtik&feature=relmfu
(飛ばし方、特にここの1:10あたりから
ご覧ください。ボードは、なるべく立てた
ほうがよい事が説明されています。

2012年9月11日火曜日

あなたは知っていましたか

興味深い動画を見つけました。

http://d.hatena.ne.jp/nishiohirokazu/20090401/1238588872

元データは:

Did You Know ?
http://www.youtube.com/watch?v=cL9Wu2kWwSY


この中の:

2010年に需要のある仕事の上位10位は2004年には
まだ存在していませんでした。
今私たちは学生を教えています。
まだ存在しない仕事に備えて。
・・・

という、くだりにはしびれました。

球面の裏返し

三次元空間内の球面(位相幾何学的な球面で自由に伸ばしたり
縮めたりできるが、穴をあけたり、切ったりつないだりする
ことは出来ない)を

自分自身と交わることを許す、ただし
とんがったところができてはいけない(数学的には「正則
ホモトピー」という言葉で定式化されます)

という条件のもとで、裏返すことができるか?

という問題は、1957年に数学者Smaleによって、その答えが
肯定的である(つまり、そのような変形で裏返すことができる)
ことが示されています。但しSmaleの結果は具体的に、どのように
変形すれば良いのかを示してはくれませんでした。

======================
現代数学では、このように、「理論的に解けることは分かっているが
その答えが具体的には求まらない」ということが、よく有ります。
ある意味、このような「存在定理を数学的な結果として認める」、
という態度が現代数学を豊かなものにした、と言っても良いと
思います。
======================

これに対して球面の裏返しの仕方を具体的に与えたのが、
数学者のシャピロとモランでした。

その後Thurstonも球面の裏返しに取り組み新しい方法を考案しています。
その内容についてはgeometry center で映像化され、公開されています。

http://www.youtube.com/watch?v=wO61D9x6lNY

最近、数学者の平澤さん達はこの問題に別の観点(球面の
”影”を見ながら裏返す・・・)から取り組んでおられます。
以前、こちらに来ていただいて詳細な内容をお聞きしました。
内容はあまり憶えていなのですが、細部までちゃんと見ると
なかなか膨大な内容で有ることはわかりました。

2012年9月3日月曜日

Thurstonの数学(3)



Thurston自身は子どもがおもちゃで遊ぶことを楽しむように
三次元多様体の研究を楽しむことが第一義であってその結果
を発表すること自体に興味はなかったのでしょう。しかし彼
の示した方向は数学界の指示を得て、2002年にはロシアの数学者
ペレルマンにより幾何化予想はついに解決されます。
(ペレルマンの仕事は、間違いなく超一流のものですが、
私にはThurstonの枠組みの中、という感情がついてまわって
しまいます。)

1990年頃から彼自身は自身の結果やそれまでに知られている
幾何学の結果をコンピュータグラフィック等を用いて一般の
人々に分かりやすく伝える、という仕事に取り組むようになり
ます。

http://www.youtube.com/watch?v=AGLPbSMxSUM
http://www.youtube.com/watch?v=MKwAS5omW_w

また子供向けの数学の講座なども盛んに行うようになります。
20103月にはIssey Miyakeのファッションショー(パリコレ)
に協力しています。(「ポアンカレオデッセイ」)この時の
ショーの様子やThurstonのインタビューが

http://www.youtube.com/watch?v=lMneAQsAZUA&feature=relmfu
http://www.youtube.com/watch?v=eQAuSGvQjN0&feature=youtu.be

で見ることが出来ます。

一般人とのギャップが多くすぎるからでしょうが、天才と呼ばれる
人たちの行き着く先というのは一般的に言うと、あまり幸福なもの
ではないような気がします。Thurstonはそのような並の天才とは
違った境地に至ったように見えます。

2012年9月2日日曜日

Thurstonと数学(2)

プリンストンの高等研究所で行った三次元双極幾何学に
関する連続講義のノートは間違いなく数学史に残る重要な
文献です。

なお、Thurstonの三次元双極幾何学に関する仕事については
彼自身による解説を

http://www.ams.org/journals/bull/1982-06-03/S0273-0979-1982-15003-0/S0273-0979-1982-15003-0.pdf

で見ることができます。ここでは双極構造の変形空間、測地的ラミネーション
などの基本的な道具が準備されているほか、幾何化予想と呼ばれる
主張が提案されこの分野の研究の方向性を決定づけています。

さらにこれらの研究の集大成として三次元多様体の一意化定理
と呼ばれる結果がアナウンスされます。この結果は発表された当時は
「怪物(Monster)」と呼ばれていました。一意化定理に関しては
小島定吉氏による解説(1982年)が

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sugaku1947/34/4/34_4_301/_pdf

にあります。この結果については、Thurston自身による
論文はついに発表されることはありませんでした。

この後Thurstonによって提案されたさまざまな概念に関する
膨大な解説が大勢の数学者によって、論文、講義録等等
様々な形で発表されます。あまり品のない表現ですが、
「たくさんの数学者の飯のタネを提供した」と言えるでしょう。

2012年8月31日金曜日

Thurston と数学

Thurstonは大学時代は特に目立ったという所はなく、
またその学位論文も、非常に良い結果ではあるけれど
現代数学の方向性に大きな影響を与えるというレベルの物
では有りませんでした。

現代数学の先頭を切る多くのアメリカ数学者はロシア、
東欧、中国等から移ってきた人々ですが、その中では
珍しく、Turstonはアメリカ育ち(子供の頃はオランダに
いたという話は聞いた覚えは有りますが)です。

ただ、その才能ははっきりと認められていたようで、
カリフォルニア大学バークレー校、プリンストン大学
等超一流校からオファーが有ったそうで、結局、彼は
プリンストン大学に務めることになります。
プリンストン大学ではまず、学位論文で取り扱った
「葉層構造」と呼ばれる分野で未可決問題
(オイラー標数0の多様体上の葉層構造の存在、
ゴドビィヨン・ベイ不変量の連続性等)を立て続けに
解決します。
もちろんこれは数学にとって良いことなのですが、
この後、多くの葉層構造の研究者が「もうこの分野には
研究すべき問題が残っていない」と感じて、この分野から
さってしまいます。

このことに心を痛めたThurstonは葉層構造の次に
取り組んだ「三次元双曲幾何学」では、明確に
何か問題を解決する、という形ではなく、その分野
に色々な花が咲くことを目指して、大地を耕すような
研究を進める様になります。

2012年8月29日水曜日

Thurston 逝去

数学者William Thurston (1982年フィールズ賞受賞者)が亡くなった
というニュースが届きました。

http://www.math.cornell.edu/News/2012-2013/thurston.html

享年65歳。早過ぎるその死を悼む声が数学界に満ちているよう
に感じられます。
私自身は、直接お話をしたことはほんの数回しか有りませんが
「正真正銘の天才」がどういうものか、思い知らされたというか
とにかく強烈な印象を与えてくれました。

2012年8月16日木曜日

「お盆」を英語で説明すると(6)

ステップ4.
英訳

ステップ3で作った話の流れ

=================================
「家」(「家族」よりはずっと広い意味を持つ)というのは武士の家族
制度に基づく、伝統的家族制度である。ここでは個人より「家」が優先
されており、「家」を引き継ぐことが出来るものはひとりだけでその者は
「家」のメンバーに対して絶対的な権力を持っていた。
この制度は戦後になくなったが、現在で「お盆」と呼ばれる期間にその名残を
見ることができる。

お盆とは
・先祖や亡くなった人たちが苦しむことなく、成仏してくれるようにと、子孫が、報恩や追善の供養をする期間
のことで
・関西では8月の13日から16日までの4日間を指すことが多い
この期間は、公的な祝日ではないが、
・8月15日前後は平日であってもかなりの人が休日になる全国的に大多数の人が墓参りをする
・12日夕刻か13日午前中に盆堤灯に火を灯す。迎え火
・16日(又は15日)に送り火。
と呼ばれる行事が行われる(地方によって形は様々である)。
「家」というのは伝統的な日本の生活の中
では重要な社会的単位とみなされてきたが、現在の日本では「家」というつながりは
次第に弱くなってきている。しかしながら、お盆の期間に親戚が一同に集まって、
迎え火等の行事に参加することによって、家のつながりを確認することができる。
お盆は日本の伝統を感じさせてくれる数少ない行事のひとつと言える。
===================================

を英訳します。但しここでは英語の講義をするつもりは有りません。
いかに英訳の壁を低くするか、特にいかにうまく翻訳サイトを利用するか、という
事について考えてみたいと思います。

インターネット上には無料の翻訳サイトが色々とあります。
例えば

エキサイト翻訳
http://www.excite.co.jp/world/

google翻訳
http://translate.google.co.jp/

などです。ところで昨年の夏の本校の国際行事でも本校の生徒がまとめの時に
これを使って英訳をしようしていたようですが
残念ながら、日本語を単純に翻訳させただけではほとんど使い物になりません。

例えばgoogle翻訳で

「家」(「家族」よりはずっと広い意味を持つ)というのは武士の家族
制度に基づく、伝統的家族制度である。

を訳してみると

"House" (from "family" has a much wider sense) that it is a family of samurai
Based on the system, which is the traditional family system.

となります。それらしい文章ではあるけれど例えば「家」を"House" 
と訳している時点で使い物にならないことがわかります。


2012年8月14日火曜日

「お盆」を英語で説明すると(5)

ステップ3(続き).

一回文章を書いたら流れを確認する。今書いた文章を
読みなおして文章の流れが自然か(頭の中にすっとはいって
くるか)確認します。
ここでは「家」の説明を先頭に持ってくることにします。
具体的には次のようになります。

=================================
「家」(「家族」よりはずっと広い意味を持つ)というのは武士の家族
制度に基づく、伝統的家族制度である。ここでは個人より「家」が優先
されており、「家」を引き継ぐことが出来るものはひとりだけでその者は
「家」のメンバーに対して絶対的な権力を持っていた。
この制度は戦後になくなったが、現在で「お盆」と呼ばれる期間にその名残を
見ることができる。

お盆とは
・先祖や亡くなった人たちが苦しむことなく、成仏してくれるようにと、子孫が、報恩や追善の供養をする期間
のことで
・関西では8月の13日から16日までの4日間を指すことが多い
この期間は、公的な祝日ではないが、
・8月15日前後は平日であってもかなりの人が休日になる全国的に大多数の人が墓参りをする
・12日夕刻か13日午前中に盆堤灯に火を灯す。迎え火
・16日(又は15日)に送り火。
と呼ばれる行事が行われる(地方によって形は様々である)。
「家」というのは伝統的な日本の生活の中
では重要な社会的単位とみなされてきたが、現在の日本では「家」というつながりは
次第に弱くなってきている。しかしながら、お盆の期間に親戚が一同に集まって、
迎え火等の行事に参加することによって、家のつながりを確認することができる。
お盆は日本の伝統を感じさせてくれる数少ない行事のひとつと言える。
===================================

これで一応論理的まとまりのある文章ができました。日本語の不自然なところ
や、表現を改めてゆけば、日本語の説明文が出来ることになります。
今回の目的は英語での説明ですので、日本語のほうを磨くのはもう
やめにして、英訳にかかることにします。


2012年8月13日月曜日

「お盆」を英語で説明すると(4)


ステップ3

ストーリーを組み立てる。
ステップ1で作ったリストの事実を積み上げていって、
ステップ2の伝えたいメッセージを導くためのストーリーを考えます。
例えば次のようなストーリーを考えたとします。
(私の文章は全然ひねりのない一本道のものがほとんどです。
あまり面白みは無いのですが研究費の申請等では、やはり
凝ったひねりは入れないほうが良いように思います。)

お盆というのは

先祖や亡くなった人たちが苦しむことなく、成仏してくれるようにと、子孫が、報恩や追善の供養をする期間
のことで
関西では8月の13日から16日までの4日間を指すことが多い
この期間は、公的な祝日ではないが、
8月15日前後は平日であってもかなりの人が休日になる全国的に大多数の人が墓参りをする
12日夕刻か13日午前中に盆堤灯に火を灯す迎え火
16日(又は15日)に送り火。京都の夜を美しく彩る大文字焼はこの送り火の名残。送り火
「家」(「家族」よりはずっと広い意味を持つ)というのは伝統的な日本の生活の中では
重要な社会的単位とみなされてきたが、現在の日本では「家」というつながりは次第に
弱くなってきている。しかしながら、お盆の期間に親戚が一同に集まって、
迎え火等の行事に参加することによって、家のつながりを確認することができる。
そういう意味でお盆は日本の伝統を感じさせてくれる数少ない行事のひとつと言える。


ここまで まとめてきたところ、どうも「家族」と「家」の違いを説明する
必要があるようです。そこでまた「家」に関する情報を集めることにします。

ウィキペディアには

家制度(いえせいど)とは、1898年明治31年)に制定された民法において規定された日本家族制度であり、親族関係を有する者のうち更に狭い範囲の者を、戸主(こしゅ)と家族として一つのに属させ、戸主に家の統率権限を与えていた制度である。江戸時代に発達した、武士階級の家父長制的な家族制度を基にしている。
女性参政権の施行と日本国憲法の制定に合わせて、1947年昭和22年)には民法が大規模に改正され、親族編・相続編が根本的に変更された為に、家制度は廃止された。

と書かれています。このあたりの記述については、学問的な
意味をちゃんと捉えて書くべきなのでしょうが、ここでは外国の人にさらっと
説明する、という観点から無難にまとめることを考えます。

例えば、

「家」というのは武士の家族制度に基づく、伝統的家族制度である。ここでは
個人より「家」が優先されており、「家」を引き継ぐことが出来るものはひとりだけで
その者は「家」のメンバーに対して絶対的な権力を持っていた。

というのはどうでしょうか。