2021年12月22日水曜日

2021年12月22日全校集会

 今年も間もなく終わろうとしています。

皆さんにとってどんな一年だったでしょうか?

世の中では今年も去年に引き続きコロナウイルス感染症に振り回された一年でしたが、10月が近づくに従ってだんだん感染者が減ってきました。

もちろんまだ安心できるような状態ではなく、注意は続けなければなりません。

でも、本校でも運動会、歩走会、音楽会などの行事ができたこは本当によかったなと思いますし先生も嬉しく思っています。


ところで先週皆さんが音楽会で奈良女子大学を訪問しました。実は奈良女子大学の中庭には池があってその周りにぐるっと木が植えられています。ここにはたくさんのセミの幼虫がいて毎年、たくさんのセミがここで鳴いています。たくさんのセミがいるので木にはたくさんのセミの抜け殻がくっついています。このたくさんのセミの抜け殻を探すのが先生は好きなんです。


今年の夏にははこんな写真が撮れました。





この一枚の写真の中に三十九匹のセミの抜け殻が写っています。


先生はこんなにたくさんの抜け殻が見つかったのがあまりに嬉しくて夏の日差しの中一時間以上木のそばに立ってiPadを使って写真の中の蝉のいるところに印を付けていました。写真を撮った後も先生はこの写真を夏休みの間ずっと眺めていたんですね。ところで最近になって、この写真のこの木の上にくっついている抜け殻が同じ間隔で綺麗に並んでいるな、というふうに見えてきたんですね。

これを見てください。


一番上の抜け殻はかなり高いところにあります。そこから、次の丸まで、このくらいの長さ。次の丸までこのくらいの長さ、と大体同じくらいになっているんですね。これに気がついた時「へー、オモシローイ」と思いました。


ところで皆さんの教室には自由研究をまとめた模造紙が貼られていますよね。全部ではないけれど先生も見せてもいました。みんなほんとによく観察したり調べたりしていると感心したし、みんな楽しそうに研究している様子がうらやましかったです。


この時、ふと「このセミの抜け殻が並んでいる様子は、先生の自由研究のテーマになるぞ」と思ったんです。なぜ、セミの抜け殻はこんな風に並ぶのか、どうしたら調べることができるのか・・・そんなことを考え出したら、いろんな考えが浮かんできて止まらなくなってしまいました。


さて一年が終わります。大人は年の終わりに忘年会と言って親しい人が集まって食べたり飲んだりします。嫌なことは忘れてスッキリした気持ちで新しい年を迎えよう、という集まりですね。それは悪いことではないのだけれど、


「今年あった嫌なことは忘れよう」


と考えるより、


「今年はこんないいことがあったよな」


と思いながら年を終わるともっといい気持ちになれるんじゃないかな、と思います。そしてもう一歩進めて


「今年はこんないいことがあったから来年はこうすればもっといいことがある」


と思えるともっと幸せになれます。

先生は来年の夏は毎日セミの抜けがどんな風に増えていくのか,観察して,そしたらセミの抜け殻があんなに綺麗に並ぶ理由がわかるのではないか、と今から夏が来るのを楽しみにしています。


皆さんも先生と同じような気持ちで新年をを迎えてもらえたらいいなあと思います。

皆さんが、幸せな気持ちで今年を終えることができますように、

そして幸せな気持ちで新しい年を迎えられますように、

そんな風にお祈りしています。




2021年7月20日火曜日

2021年7月20日附属小学校全校集会

今日は先生が小学生の時のお話をしようと思います。
今か52年前1969年今日と同じ7月20日アポロ11号という宇宙船が人類で初めての月面着陸を目指して月の上空百十キロを飛行中でした。操縦をしていたのはニール・アームストロング船長とバズ・オルドリンの二人でした。
これがアームストロング船長です。


https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%82%B0#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Neil_Armstrong_pose.jpg

この月面着陸計画はアメリカのケネディ大統領が発表したものでした。ケネディ大統領は今から60年前1961年に「1969年までに人類を月に送る」と宣言したのです。
しかしこれは無茶な計画でした。
アメリカは1961年5月5日に宇宙飛行士アラン・シェパードがマーキュリー3号で15分22秒の宇宙飛行をアメリカ人として初めて行っただけでした。15分ですよ。ちょうど幼稚園の年少さんが学校の門から学園前の駅に行くまでの時間くらいでしょうか。それから8年、幼稚園の年少さんが小学校5年生になるくらいの期間で月まで行くようになるという計画なんです。
みんな難しい計画であることを知っていました。でもアメリカの人たちはこれに取り組むことに決めたのです。そしてそのおかげで、色々な技術が進歩しました。その一つがコンピュータです。それまでのコンピュータというのは一部屋ぐらいの大きさで、とても宇宙船に積めるものではありませんでした。技術者たちはそれを30キログラムまで小さくすることに成功しました。コンピュータができたら今度はそれを動かすソフトウェアを作る必要があります。これを担当したのが女性科学者マーガレット・ハミルトンでした。
これがハミルトンです。


https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%B3_(%E7%A7%91%E5%AD%A6%E8%80%85)#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Margaret_Hamilton_in_action.jpg

ハミルトンは、元々はマサチューセッツ工科大学の研究所でプログラムの開発をしていましたが、NASAが宇宙飛行船のプログラムを開発する人を探していると聞いて、
「絶対にこの仕事をやりたい」
とこれに応募して採用されたのです。その時ハミルトンは27歳で一人娘を抱えたお母さんでした。
やがてプログラムチームの責任者になったハミルトンは宇宙船が月に着陸するときにどのような姿勢で、何秒間逆噴射するのかということを計算するプログラムを作り上げました。宇宙飛行士はプログラムが指示する通りに操作をすれば予定通りの場所に着陸できるはずでした。でも宇宙飛行士の中には機械の言う通りに操縦することを嫌がってハミルトンに心ない言葉を投げかける人ももいました。ハミルトンはそのような言葉にも負けずにアポロ宇宙船を安全に月に着陸させるためのプログラムを作り上げたのでした。
さてアポロ11号の話に戻りましょう。これが月着陸船(ただし写真はアポロ16号)です。



https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9D%E3%83%AD%E6%9C%88%E7%9D%80%E9%99%B8%E8%88%B9#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Apollo_16_LM.jpg

アポロ宇宙船はハミルトンのプログラムが計算した時間通りにロケットを噴射してスピードを落とします。すると宇宙船はどんどん月に向かって降下していきます。どんどん速度が上がっていきます。ところが、このときアームストロング船長はアポロ宇宙船は予定していた場所を2〜3秒早く通過しているのに気がつきました。このままではコンピュータが設定した地点よずっと向こう側に着陸することになってしまいます。
そのとき突然「ブーブー」と警告のブザーが宇宙船の中に鳴り響きます。コンピュータには「警告1202」という表示が出ています。アームストロング船長達は地上で何度も着陸の練習を行なっていました。そのときには考えられるありとあらゆる事故の訓練もしていましたが、この1202というのは一度も見たことがないものでした。実はこれはハミルトンが組み込んでいた安全用のプログラムだったのです。ハミルトンは
「どんな事故が起こるかいろいろ考えてプログラムをしてきた。でもこれで本当に十分だろうか?
本番では私たちが予想もしなかった事故が起こるのではないか」
と考えました。そして
「本番の月面着陸で私たちが予想もしなかったことが起きた時にもちゃんと対応できるようなプログラムを作ろう。」
と考えました。そしてこのプログラムが動いたことを示すのでアラーム1202だったのです。
このおかげで、月面着陸は中止することなく続けることができました。着陸に向けていよいよ最後の段階に入りました。ところが着陸地点を確認したところ、予定の地点より6キロもずれていること、そしてそこはクレーターという大きな穴の中であることがわかったのです。そこでアームストロング船長はコンピュータの自動操縦を止めて手動で操縦することにしました。アームストロング船長の操縦で月着陸船はふわっと浮き上がって、クレーターを飛び越して行きました。普通ならクレーターをさっさと飛び越そうとするところですがアームストロング船長は丁寧にゆっくりゆっくり着陸船を進めていきます。アームストロング船長は着陸船を急に動かすことが危険なことをよく知っていたのです。
宇宙に飛び立つ前にアームストロング船長は着陸船の練習機で何度も何度も、周りの人から
「あいつはおかしいよ」
言われるくらいに月着陸の練習を続けていました。訓練機を自分の思いどおりに動かせるようになったアームストロング船長は無重力状態で急にスピードを変えると燃料タンク内で燃料が暴れて危険なことをわかっていたのです。
ところがそのときまたアラームが鳴りました。今度は「燃料が90秒しか残っていない」と言っています。ギリギリの燃料しか積んでいない月着陸船には余分な距離を飛ぶ余裕などなかったのです。クレーターを飛び越してもその向こうは岩だらけでとても着陸できそうにありません。アームストロング船長は必死で着陸できる場所を探しました。その時、三十メートル四方くらいの平らな場所が見つかりました。
「あそこに着陸するしかない」
と決心したアームストロング船長は着陸船をゆっくりそちらに誘導していきます。練習もしたことのない、失敗は許されない一発勝負です。1分、30秒・・・燃料はどんどん減っていきます。やがて着陸地点に近づくとロケットの噴射で激しい砂埃が上がり、周りの様子がよく見えなくなりました。斜めに着陸すれば宇宙船は転んでしまいます。
アームストロング船長は最後の力を振り絞って宇宙船を進行方向とは逆向きに少し傾けてスピードを殺し、ふんわりと着陸したのでした。この時に残っていた燃料の量は16秒足らず、アームストロング船長の心拍数は1分間に157までに達していました。
こうして、人類初の月着陸は成功したのです。
日本時間で7月21日朝5時17分、当時小学5年生の私はその様子をテレビで見ていました。
さてハミルトンは宇宙飛行士から嫌味を言われながらも着陸プログラムを作り上げただけでなく、それ以上の仕事をしました。アームストロング船長は「やれ」と言わなかったし必要ないかもしれないのに、危険な訓練をやり遂げました。
二人とも自分の気持ちを絶対に曲げませんでした。そして二人のこの強い意志がなければ月着陸は成功しなかったでしょう。
さて皆さんはこれから夏休みに入ります。
この長い休みを利用していつもとは違う経験ができると思います。そこで先生から皆さんにおすすめしたいことがあります。皆さんは学校に来ている間はお友達や先生の「おたずね」があって、自分で気がつかなかったことを教えてもらうことができます。でも夏休みの間は友達からの「おたずね」はありません。そこで
この夏休み中はみなさんには自分で自分に「おたずね」をする習慣をつけてもらいたい
と思います。ハミルトンもアームストロングもやれと言われたことやるだけでは満足せず「まだ見逃していることはないか?」と自分自身に「おたずね」をし続けたのです。この夏休みには皆さんにはそんな経験をしてもらえたらいいな、と思います。
そして9月にまたみなさんの元気な姿を見れることを楽しみにしています。
みなさんにとって実りの多い夏休みになりますように。


2021年4月8日木曜日

2021年始業式

今から10年前(2011年)に附属中等学校の校長になり、それがきっかけで始めたこのブログですが、校長を辞めてからはブログ名は

「数学者でもある(元)校長のブログ」

でしたが、色々巡り合わせがあって今年から附属小学校の校長をしています。

のでブログ名を

「数学者でもある校長のブログ」

に戻しました。早速始業式で子どもたちに挨拶をしました。

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みなさんおはようございます。

こんど新しくこの学校の校長になりました。

小林と言います。

普段は大学で数学の研究をしています。

これから皆さんと一緒にこの学校で楽しい生活を送りたいと思っています。

どうかよろしくお願いします。


ところで、皆さんはセミの抜け殻は知っていますよね。

夏のかんかん照りのなかセミが大きな声で、ミーン、ミーンと鳴いている様子を思い浮かべてみてください。

その時に木の上や足元を見るとちょっと茶色で透明でパリパリした感じのセミの抜け殻が見つかることがよくあります。



セミは卵からかえると幼虫になって土にもぐって木の根から養分をもらいながら7年間を過ごします。

7年たつと夜中にセミは地上に出てきて自分に養分をくれた木に登っていって、そこでじっととまります。

そして体がわれて、なかから大人のセミが出てきて、そこに幼虫だったときの殻が残ります。

これがセミの抜け殻です。


実は先生はセミの抜け殻を探すのが趣味なんです。

セミの抜け殻はとても軽くて、弱いのですぐにどこかに飛んで行ったり壊れたりするので夏が終わると、もう見れなくなる、と思っていませんか。

セミの抜け殻の中には、雨が降っても、台風がきても、雪が降ってもそれに耐えて何年も何年も木にしがみついているのがいるんです。


そんな抜け殻を見つけるのが、先生は好きです。

この学校に来た時もどこかにセミの抜け殻が無いかな?って探してみました。

そしたらあったんですね。

今もありますよ。


学校の門を入って、校舎に向かって歩いて行きます。

右手には運動場、左手には遊技場がみえますね。

少し歩くと皆が学校に入る時に通る下足室があります。

そこを通り過ぎてもう少し歩くと、左手には学校のシンボルと木がたくさんうわった花壇が見えます。

その中に大きな大きなゴツゴツした、ところどころがぷっくりと膨らんだ木があります。

ちょうど先生のいる校長室の窓の外あたりです。

その木のかなり上の方にね、あったんですよセミの抜け殻が。


とってもうれしかったです。

「無いかもしれないな〜でもあったらいいな〜」

って思いながら探していたものが見つかった時は本当に嬉しいです。

なぜ嬉しいかという、そこにあるのかないのか前もってはわかっていないからです。


先生は数学を研究しています。

数学が大好きです。

何がそんなにいいのかというとちょうどこのセミの抜け殻を見つけた時と同じように幸せな気持ちになれるからです。

数学の研究で考える問題は答えがあるのか、無いのか、見当もつかないような問題です。

そんな問題が解けた時の嬉しさはセミの抜け殻が見つかった時の嬉しと同じように大きなものです。

だから先生は数学の研究をしているのです。


さていま私たちはコロナ禍という大きな問題をかかえています。

これも答えがあるのか無いのかもわからない問題です。

社会に出てからは解けるのか解けないのかわからない問題だらけです。

でも先生は希望を持っています。

いまワクチンや人工抗体、新しい薬などたくさんの研究者が工夫をしてこれに打ち勝とうとしています。

これが先生がセミの抜け殻を見つけたようにコロナに負けない方法をみつけてくれると先生は信じているからです。



さて新しい学年が始まりました。

先生は皆さんも先生と同じように幸せな気持ちになれたらいいなと思います。

そのためにこの学年が始まるにあたって皆さんには自分のセミの抜け殻のようなものを探してほしい、と思います。

それはなんでも構いません。

先生にとっては数学がセミの抜け殻です。

皆さんも自分のセミの抜け殻をもってそれを見つける悦びに出会ってもらえたらいいな〜、と思います。


新しく始まる一年が皆さんにとって良いものになりますように。

一緒に頑張りましょう。

そしてよろしくお願いします。