2013年1月31日木曜日

一点折りの折り紙

円盤形の折り紙を持ってきて,円の中心から4本の半径の線分
e1, e2, e3, e4 をのばします.e1は山折,e2, e3, e4は谷折に
折ってやります.e1, e2, e3, e4 の間の角度をうまくとると
次の図のように負った結果は「ぺたん」と平面に押し付けら
れるでしょう.
(この図と下の図は奈良女子大学大学院数学専攻入井さんが描いてくださいました)
ではこのように平面に押し付けられるのはe1, e2, e3, e4 が
どのような位置関係にあるときでしょうか.図のようにそれぞれの
線分のなす角をα,β,γ,δとします.
下の図のように考えると,

α進んで,β戻って,γ進んで,δ戻ると元の所に戻る,

言えます.これを式にすると

αーβ+γーδ=0・・・(1)

となります.一方α,β,γ,δを足すと円周を一周しますから
α+β+γ+δ=360°が成り立ちます.これと(1)式をあわせると

α+γ=β+δ=180°・・・(2)

がでてきます.(自分で導けましたか.)

ところでα+β+γ+δ=360°である事実を使えば

α+γ=180°からβ+δ=180°は導けます.
そこで(2)式は

α+γ=180°・・・(2’)

だけから導けることがわかります.結局折り紙が平面に押し付け
られるための条件は(2’)でよいと言うことになります.

ところで私には

(1)式は作られたもの



(2’)式は発見されたもの

と感じられるのですが.

2013年1月26日土曜日

数学の成果

「数学上の成果は,作られるものか,発見されるものか」
という問題提起があります.例えば工業製品は様々な
原料を,ある意図に基づいて加工して出来上がるもので
そこには明らかに作り手の意図があって生み出されるもの
です.それに対して,地下に眠るダイヤモンドは,あらかじめ
そこにあるもので発見されれば皆の目につきますが,たとえ
掘り出されなくても間違いなくそこに存在します.

理系学問の中でも工学系の分野での成果は ほとんど
『作り出されるもの』です.理学系の分野になると
微妙になってきて,例えば生物学では,

1.DNAというものの構造がわかる,
2.その応用として遺伝子組み換えの技術を開発する

という二つのステップを考えると
1.は「発見されるもの」
2.は「作り出すもの」

と言えるでしょう.では数学に関してはどうかというと,

数学の成果は発見されるもの,

のように見えます.数学の世界にはいろいろな定理や公式が
ありますが,その中の一級のものは,人間の意図とは関係なく
ずっと「発見されるのを待っていた」ように見えます.

2013年1月25日金曜日

数学パズル


六本の新しい鉛筆か割りばしを用意していください(それぞれの鉛筆には①から
⑥までの番号を振っておきます)。まずこれを次の図のように2段に積み重ねて
ください。

この時には、①の鉛筆は②、③、⑤、⑥の鉛筆には接していますが④の鉛筆には
接していませんよね。
では問題です。六本の鉛筆をうまく2段に積み上げて①の鉛筆は②,③,④,⑤,
⑥に、②の鉛筆は①、③、④、⑤、⑥に・・・といったようにそれぞれの鉛筆は
他の5本の鉛筆に接しているようにしてください。



答えは後日掲載しますね.

2013年1月16日水曜日

数学者ポアンカレ(6)

高等鉱業学校で鉱業に関する様々な勉強をしている間も
ポアンカレは数学に関する研究を行っていました.
それも,数学とはおおよそ関係のない多くの科目の
勉強の傍らで,数学の様相を大きくかえるような研究を
積み重ねていたのです.この時の研究の様子については
有名なエッセイ「科学と方法」(現在岩波文庫で復刻されています)
の中(第3章数学上の発見)で詳しく述べられています.
(有名な馬車のステップに足をかけたとたんに問題の解答
が見えた,というくだりはこの中のものです.)
この仕事に関する評価は高く,1979年12月1日鉱山技師
であったポアンカレをカーン大学が教授に任じたのでした.

こうしてポアンカレは本来彼がいるべき場所,つまり数学
の世界,に落ち着いたのでした.ひどく遠回りをしたようにも
見えますが,ポアンカレ自身はそのようには感じていなかった
ようです.かれは鉱山技師として無期限の休職許可を与えられ,
給与はないものの形式的には鉱山技師であり続けました.
実際,現場を離れた何十年もたった後も,鉱業について忘れる
ことはなく,折に触れてそれについて語っていたということです.

2013年1月15日火曜日

エスプリ

フランス語にエスプリ(esprit)という単語があります.
英語で言うとspirit, 日本語では「精神」と訳されますが,
それぞれの単語の持つ雰囲気は微妙に違います.

英語でspiritというと,非常に前向きな,たとえ困難があっても
それを正面から乗り越えてゆく力強さを感じます.
一方日本語で「精神」といったときには,単に結果を
求めるだけはなくて,その過程で個人の精神の高まりを
目指す,といったある種の修行のような雰囲気を感じます.

それに対してエスプリという言葉には,spiritの持つ「汗臭さ」
や精神の持つストイックな態度は感じられません.例えて
言うなら,ポアンカレのような,すばらしい能力を持ちながら
それを誇示するでもなくごく自然にその能力を発揮して周りの
人はそれを自然に認めてついてくる姿,そして本人はとても
ナイーブで,まじめでそして洗練されていなくてドジで,・・・

数学者ポアンカレ(5)

炭鉱ではランプが爆発事故の引き金になる危険がある、
ということでランプの管理は厳密に行われていました。
ランプを持ち出すときは、どのランプを持ち出したのか
きちんと記録を取ることになっていたのですが、亡くなった
ペロのそばにあった、爆発の原因となったランプは
全く別の作業をしていたポトのものでした。そしてペロの
ランプはポトのそばにあったのです。

これらの事実は爆発とどう結びつくのでしょうか。

ポアンカレはこれらの事実をつなぎ合わせさまざまな
可能性を考え、それを論理的に考察してゆくことによって
爆発の原因を突き止めてゆきます。

このあたりの話をあまり詳しくすると、出版社への営業妨害
になる可能性があるので、具体的な話はもうやめておこう
と思いますが、最終的にこの報告書では、この爆発が様々
な偶然が重なったことに、ペロのほんの一瞬の不注意が
重なって起きたのだということを明らかにしています。

この報告書は 科学者らしく淡々と書かれていますが、
全体からはポアンカレの思いやりが感じられるもので
あった(ペロを非難するような調子でもなかったし、また
残された未亡人、遺児に対する緊急援助についても
しっかりと言及している)ということです。ただ客観的な
事実を言及するあたって決定的に抜けていたのは、
二次爆発の危険がある坑道にはいり、詳細な調査を
行ったポアンカレ自身の行動について一切記載されて
いない、ということです。


数学者ポアンカレ(4)

1879年3月28日の鉱山技師としてのキャリアをスタートした
ポアンカレですが,それから8ヶ月の間に担当地区の鉱山を
5回訪れレポートを作成する等精力的に活動をしています.

かれが鉱山技師となって5ヶ月ほどたった
9月1日午前4時彼の担当である,操業を始めたばかりのマニの
鉱山で爆発事故が発生,そのとき坑道には現場監督,作業員
等22人がいましたがそのうち16人が亡くなるという大惨事と
なりました.この知らせを聞いたポアンカレは同日昼過ぎに
マニに到着(この時の,ポアンカレへの連絡はどのように
なされたのでしょうか.電信,電報?ちょっと気になります)
まだ,爆発の原因も特定されていない中,自ら炭坑におり
事故現場を自分の目で見て,そしてそれから3週間をかけて
詳細な報告書を作成します.

この報告書の現物は見ていませんが先日あげた書籍によると
詳細な観察と論理的な推論に基づくすばらしいものであった
ようです.

ポアンカレは死体の状況等から爆発場所を特定
しましたが,ここでいくつかの不可解なことが見つかりました.

まず爆発が起きたのは亡くなったペロという作業員が持って
いたランプが原因であることはわかったのですが,不思議な
ことにこのランプは地上から15センチくらいの所に下げられて
いたのです.これが何が不思議かと言いますと,坑道内で
発生する可燃性のガスは空気より軽いため,天井からたまって
いくという性質があります.このため普通なら地上15センチまで
ガスがおりてくるまでに,人間は窒息するのですが,遺体の
状況からペロは爆発により一瞬のうちに亡くなっていることが
わかったのです.

また鉱山で使うランプは爆発がしにくいような工夫がなされて
いるので普通にランプを使っているだけでは,そう簡単に
爆発はおこらないことになっています.ペロの近くにあった
爆発の原因となったランプの残骸をよく調べてみると,そこには
つるはしが傷つけられた後が残っていることがわかりました.
どうやら,気がつかないうちにつるはしでランプのガラスを
割ったことが爆発の一因になったようです.ただここでも
不思議なことにペロはつるはしを持っていなかったのです.

さらに不思議なことにペロが持っていたランプはペロが記録に
残して持ち出したものではなかったのです.

2013年1月14日月曜日

数学者ポアンカレ(3)

エコール・ポリテクニークを優秀な成績で卒業しますが
引き続き高等鉱業学校(エコール・デ・ミーヌ)で三年間
勉強を続けます.
この頃既にポアンカレは数学に対する強いあこがれを
持っていましたが,なぜ,鉱業学校だったのでしょうか.
その理由はよくわかりませんが,当時鉱業(鉱物の採掘等)
は,産業革命を支える,言い換えると国の基盤を支える,
重要な技術と見なされていました.優秀な理系の学生は
当然鉱業を学ぶべきだという雰囲気があったのかもしれません.
(一昔前の,優秀な理系の学生は物理学を専攻して
原子力の研究を通して国に貢献する,といった感覚に
近いのかもしれません.)

ポアンカレはここで鉱物学,地質学,鉄道建設,鉱業法規,
農学等おおよそ数学とは関係のない,鉱山運営に必要となる
実学をおさめます.またここではフィールドトリップといって
フランスの地方や国外に出て工学に関するレポートを書くこと
になっています.ポアンカレはハンガリーと北欧にいって
冶金技術等についてのレポートを書いています.このレポート
もすばらしいできであったようです.
そして1878年(ポアンカレ24歳ということになるでしょうか)
に鉱山学校を卒業,鉱山技師としてヴズールに配属されます.

2013年1月13日日曜日

数学者ポアンカレ(2)

非常に頭が良く、成績優秀であったポアンカレですが、
決してそれを鼻にかけるようなところはなく、それどころか
むしろ、学校ではおとなしく、ぼんやりとしていることが
多く、一見したところとても天才的な頭脳の持ち主とは
見えなかったようです。

妹は彼のことを「勉強しているところを見たことがなかった」
と言っていますし、授業中もノートをとることもなく、ぼんやりと
物思いにふけっているようなところがあったとのことです。
とくに手先は不器用で、右手で書いても左手で書いても区別が
つかないくらい字は下手で、デッサンの成績にいたっては
零点をとってしまった、とのことで、これは彼がエコール・ポリテクニーク
に入学する際にに大きな問題になりました。

思うに、天才的な頭脳をのびのびと育てられたのではないでしょうか。
そのせいか、敵も居なかったように見えます。実際、
妹はポアンカレの性格を次のように記しています。

精神がとても安定していた。怒りや感情を露にすることがなく、
激情することもなかった。心の奥底にある感情を細心の注意を
払って隠していた。

 以上:
「ポアンカレ予想を解いた数学者」、ドナル・オシア、日経BP社
「ポアンカレ予想」、ジョージ・スピーロ、早川書房
を参照しました。

2013年1月11日金曜日

数学者ポアンカレ

フランス人数学者アンリ・ポアンカレ(1854〜1912)は
現代数学のあらゆる分野に関して大きな業績をあげた,大数学者
です.

フランスのナンシー生まれ,父親は医者でナンシー大学の医学部
教授でした.名門の家系であったようでいとこのレイモン・ポアンカレ
はフランスの大統領も勤めています.
幼い頃から頭がよかったようで,小さい頃からしゃべり始めましたが
頭の回転が早すぎて,口がそれに追いつかづ,話がよくつっかえた
とのことです.
5歳の時にジフテリアにかかり,それがきっかけで非常に臆病に
なったそうで,友達と遊ぶことよりも読書の世界に入り込むことを
好んだということです.記憶力は抜群であったそうで,ある文章が
どの本の何ページの何行目にあるのかまで言えたということです.

小学校ではあらゆる科目で優秀な成績をおさめましたが,特に
文章力(作文)が優れていたそうです.とくに数学優れていると
いう兆しはまだなく,好きな教科は地理と歴史でまた成績は
語学と理科が特に優れていたとのことです.(そういえば,
大数学者ガウスも学校時代は語学が得意で,一時期は言語学者
になることも考えていたそうです.)

2013年1月5日土曜日

数学イノベーションの推進~文部科学広報より

文部科学省の出している広報誌「文部科学広報」2012年12月号の
なかで(なお,5ページに本校Kくんの写真が出ています.)
「数学イノベーションの推進~拡がってゆく数学~」
という特集が組まれています.

http://www.koho2.mext.go.jp/157/#page=33

内容は北野武氏,森重文氏,西成活裕氏の対談で,数学の
魅力,有用性,そして数学の本質について語っています.
(私はには,長嶋茂雄の「さかなへんにブルー」の話のところで
声に出して笑ってしまいました.)

ところで,私は知らなかったのですが,昨年8月に文部科学省から
「数学イノベーション戦略(中間報告)」という報告が出ていたんで
すね.

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu17/002/houkoku/1325349.htm

上記広報によると次のような内容を含んであるそうです.
(個人的には「3. 情報発信、理解の増進等」のところに興味があります.)

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1. 数学のニーズ発掘からイノベーションにつなげるための活動
○ 数学者と諸科学・産業の研究者が出会い、数学的なアプローチによ
る解決策を議論する場(研究集会やスタディ・グループ等)の設定
○ 諸科学・産業が抱える課題の解決
に貢献し得る数学者を紹介できる相談体制(全国の数学者からなる
ネットワーク等)の整備

2. 数学イノベーションに必要な人材の育成
○ 若手研究者の実戦経験(研究集会の企画運営や研究プロジェクトへの参画等)
○ 企業へのインターンシップ等を通じた、数学専攻学生やポストドクターの新たなキャリアパスの構築

3. 情報発信、理解の増進等
○ 数学活用事例の紹介等