2012年9月2日日曜日

Thurstonと数学(2)

プリンストンの高等研究所で行った三次元双極幾何学に
関する連続講義のノートは間違いなく数学史に残る重要な
文献です。

なお、Thurstonの三次元双極幾何学に関する仕事については
彼自身による解説を

http://www.ams.org/journals/bull/1982-06-03/S0273-0979-1982-15003-0/S0273-0979-1982-15003-0.pdf

で見ることができます。ここでは双極構造の変形空間、測地的ラミネーション
などの基本的な道具が準備されているほか、幾何化予想と呼ばれる
主張が提案されこの分野の研究の方向性を決定づけています。

さらにこれらの研究の集大成として三次元多様体の一意化定理
と呼ばれる結果がアナウンスされます。この結果は発表された当時は
「怪物(Monster)」と呼ばれていました。一意化定理に関しては
小島定吉氏による解説(1982年)が

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sugaku1947/34/4/34_4_301/_pdf

にあります。この結果については、Thurston自身による
論文はついに発表されることはありませんでした。

この後Thurstonによって提案されたさまざまな概念に関する
膨大な解説が大勢の数学者によって、論文、講義録等等
様々な形で発表されます。あまり品のない表現ですが、
「たくさんの数学者の飯のタネを提供した」と言えるでしょう。