2018年はいろいろなジャンルの本を読みました。その対象は大きく、
・貧困・虐待
・壊れた心・脳
・認知・身体・環境
・数学
にわかれます。一見互いに関係ないこれらのテーマが、自分の中でゆらゆらとつながって知的な興味が大きく刺激されましたが、残念ながらこの内容を言語化・体系化することはできませんでした。いつかこれをまとめた文書を完成させたい、と思う反面そのような機会・時間があるのかどうか自信が持てないので、とりあえずこれに関連して私が興味を持った本やウェブページとその中でポイントとなった記述を紹介させていただこうと思います。
概ね私の思考の流れに沿った順番で書かれています。個人的な覚書という性格のもので他の人にはわかりにくいとは思います。引用されている文章は自分自身の記憶のためなので必ずしも文書の趣旨とは一致しません。このような記録でももしかしたら誰かのお役に立てるかもしれない、と感じたのでここに公開させていただきます。
なおここでの発想の展開には東京工業大学の鈴木咲衣氏とのやりとりが決定的に影響していることを注意しておきます。この場を借りて感謝の気持ちを表させていただきます。
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最初に紹介するのは大学の倫理・人権委員会の委員をしていたときに「若年女性の貧困」という問題を知り関係の本をいろいろと読んだ中の一冊です。特に気になったのは、ネットカフェでの生活を続けたために「(心が)壊れてしまった姉妹」のお話です。あと妊娠したものの、自分では育てられない女性のためのNPOを主催している女性の「まずは食べることと寝るところと医療が受けられるという最低三つの条件だけはクリアできるように考えています。」という言葉は同じ趣旨の表現が別の書籍の中にも何回か現れ、気にかかりました。
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○女性たちの貧困
NHK
第五章 妊娠と貧困
「Babyぽけっと」は、妊娠したものの、自分では育てられない女性たちが産んだ赤ちゃんと、子供を育てたいと希望する夫婦との特別養子縁組を仲介するNPOだ。
・・・「ちょっとおかしいんじゃないのって思うこともありますけど、ほとんどの方はわらにもすがる思いで相談してくるというのが、本当のところだと思います。元気な子を産んでもらうということに重点を置いて、まずは食べることと寝るところと医療が受けられるという最低三つの条件だけはクリアできるように考えています。」
たった一度だけ抱いた赤ちゃん
・・・一方で、岡田さんは寮を出る女性たちには最後に一度だけ子どもを抱かせることにしている。子どもを産んだという事実を、決して忘れないでほしいという思いからだ。次に子どもを産むときは、喜んで命を迎えられる暮らしをしていてほしい。「生まれてくれてよかった」と子どもにいってあげてほしい。そんな岡田さんの思いが”最後の抱っこ”には込められている。
・・・「普通に過ごすってなんていいものなんだろうって。やってみて思う。この方が、生きている感じがしますもん」
第六章”新たな連鎖”の衝撃
ネットカフェに二年以上ー彩香さん・十九歳
・・・十九歳の女の子が二年以上、ネットカフェに暮らしているという。
・・・一日あたりの料金は1900円と安いが、ずっと暮らすにはそれなりの金額がかかるのではないか。それなら、いっそのこと家でも借りればいいのではないか、そう思ってアパートとか借りないの?と聞いてみたが、既に彩香さんは、前に踏み出す気持ちが衰えているように感じた。
母と妹も。”ネットカフェ家族”出現の衝撃
・・・部屋から顔を出したのは、前髪をぱっつんにして、左右におさげを作った。可愛らしい女の子だった。なんと、彩香さんの妹、萌さん(仮名)だという。
「今、いくつなんだっけ?」
「私、今年で十四歳になりました」
「十四!?じゃあ、この四月で中学何年生?」
「中学三年生になります」
・・・学校には、半年近く通っていないという。
・・・毎日の食事は彩香さんが、コンビニから買って帰る。一日一食。薄暗いネットカフェの部屋に寄り添うように座って、パンやおにぎりを二人で分け合って食べる。それでも空腹が満たされないときは、店内の無料のドリンクバーでジュースを飲んでしのいでいるという。
・・・「自分の人生にあんまり期待していないし、社会とかにも期待はしていない。もう、何に対しても、期待も持てない。」
・・・「普通に学校も出たかったし、友達とも遊びたかったし。なんかもう、ここまで来ちゃうと、こういう運命なのかなって。自分にいい聞かせているというか、そうしないともう働くのも嫌になっちゃうし、生きているのも嫌になるというか」
第七章 解決の道はどこに
放送中から反響が殺到 ー 彩香さん・萌さん姉妹のその後
・・・「「貧困」とは「お金がない」だけでなく「教育」や「情報」が欠如している状態だともいえるのではないか、というのが取材をおえての私の実感です。」
・・・そして今、姉妹は別々の場所で新たな生活を送っている。保護施設での生活を経て、妹の萌さんは児童養護施設に入所した。彩香さんは自立を目指して、専門スタッフが常駐する施設で暮らしている。
・・・しかし、ネットカフェでの生活は、私が考えていたよりはるかに深刻なダメージを彩果さんに与えていた。・・・何度か入院しての治療も受けているという。あの状況を生き延びてきたのがそもそも奇跡的なことだったのだろうと、すっかり痩せた彼女とあって、私は改めて思い知らされたのだった。
・・・あまりにも頑張ってきた人に、「頑張って」とはいえない。むしろもう頑張らなくていいとさえ思う。とにかくゆっくり休んでほしい。そして元気になったときには、今を目いっぱい楽しんでほしい。
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女性の貧困について調べているうちに次のウェブページにたどり着きました。貧困の原因が「脳のトラブル」にあるという視点は驚きでしたが、読み進めるうちに納得させらました。この記事を書いたライター(鈴木大介氏)は自身の脳梗塞とそこからの回復の体験、そして発達障害を抱えた妻(お妻様)との関係の再構築を綴った書籍(「脳が壊れた」、「されど愛しきお妻様」)を通して、貧困に対する取り組みのあり方を圧倒的な説得力を持って、そしてユーモラスに、語っています。
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○貧困の多くは「脳のトラブル」に起因している
「見えない苦しみ」ほど過酷なものはない
鈴木大介
高次脳機能障害になった僕の行動は、そして訴える苦しさの内容は、驚くほどに彼ら彼女らに酷似していた。僕を襲った症状は、いわば「貧困当事者あるある大事典」みたいなものだった。
心の中がつねに何かでいっぱいで、何を見ても号泣してしまう発作。発作の後に訪れる、身体を縦にしていることもまぶたを開けていることも困難な極度の疲労感や虚脱感、猛烈な睡魔。
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理由のない不安の発作が始まると、サランラップで全身をぐるぐる巻きにされたように息が詰まり、窒息しそうな苦しみから逃れられない。それが不安なのかもわからない。
○脳が壊れた
鈴木大介
「本当に、所詮人間なんて、電気信号で動くものすごく高精度の機械にほかならない。・・・だが機械と違うのは、人間は正しい動きを繰り返し続けると、その正しい配線が固定化、最適化されることだろう。」
・・・「同じ低所得でも、身近な人の縁に包まれてワイワイと楽しく生きている人々は貧乏であって、QOLはさして低くない。そうした支えを失って孤独と混乱の中で抜け出せない苦痛を味わい続けている状態が貧困で、生きていることを諦めたくなるほどにQOLは低い。」
・・・「第一の価値観は、「世の中の、めんどくさい人ほど愛らしく、興味深く面白い」だ。集団には馴染めないかもしれないし一般的な社会の評価の対象にもならないかもしれない彼が彼女らだが、だからこそ突出してユニークなパーソナリティーを持っている。人間の魅力とは、個人の能力などとは全く関係のないところにある。
第4章 リハビリ医療のポテンシャル
・発達障害は生まれつきなのだろうか
・リハビリと高齢者の群れ
ここで働くリハビリ療法士たちは、極めて優秀な「子どもの発達の支援者」になる可能性を秘めたプロ集団。彼らのスキルは、子ども、そして若い社会的弱者のために大きな効果を発揮するのは間違いがない。
貧困とは、多大な不安とストレスの中で神経的疲労を蓄積させ、脳梗塞の後遺症で高次脳機能障害となったものと同様なほどに、認知判断力や集中力などが極端に落ちた状態なのではないか?
○されど愛しきお妻様
鈴木大介
不自由を障害にするのは環境
・・・「見えない不自由を抱えた人たちに、やろうとしてもできないことを強いる。そんな周囲の無理解が、いっそう当事者の不自由を苦しみ=障害にしてしまうのは、あまりに残酷なことだ。環境が不自由を障害にする。・・・」
・・・「ケアされるべき彼らが排除される理由の1つとして、どうしても避けて通れないことがある。彼らは基本的には被害的な立場に置かれることが多いが、一方で場面と相手によっては「加害的な側面」ももち合わせていると言うことだ。」
・・・「弱者を加害的な立場に追い込むのも、また周囲の環境。」
・・・「様々にある「なぜ発達障害が増えているのか」の言説の中で、僕自身高次脳機能障害の当事者として支持できると直感したのが、「現代が不定形発展発達の不自由を障害にしやすい環境に変容してきているから」と言う論考です。」
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脳の破壊が貧困につながる、という主張をサポートする本を見つけました。「消えたい」の中の言葉「普通に生活ができて、一に、美味しく食べて、二に、ぐっすり眠れて、三に、誰かと気持ちが通じ合うことができれば、人は幸せ」が最初に紹介した「女性たちの貧困」の「Babyぽけっと」の中での言葉「まずは食べることと寝るところと医療が受けられるという最低三つの条件だけはクリアできるように考えています。」に重なります。また、壊れてしまった脳の機能を積極的に再生する研究も進んでいるようです。
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○消えたい: 虐待された人の生き方から知る心の幸せ
高橋 和巳
「死にたい」ではなく、「消えたい」という希死念慮
・・・虐待を受けて育った人は、人生の辛さから逃れるために「死にたい」とは言わない。「消えたい」と言う。
・・・「死にたい」は、生きたい、生きている、を前提としている。「消えたい」は、生きたい、生きている、と一度も思ったことのない人が使う。
・・・「消えたい」の中には怒りはないか、あっても微かだ。そして、淡い悲しみだけが広がっている。
・・・「食べ物は何が好きか」とか、「今日は、何が食べたいか?」とかを聞いた。彼女は、質問の意味がわからないようだった。「特に好きなものはない」、「別にない」とだけ繰り返していた。
・・・これが、私が被虐待者(異邦人)から教えてもらった最初のことである。つまり、普通に生活ができて、一に、美味しく食べて、二に、ぐっすり眠れて、三に、誰かと気持ちが通じ合うことができれば、人は幸せである、と。
○子供の脳を傷つける親たち
友田明美
・・・人生の初期段階に、親や養育者といった身近な存在から適切なケアと愛情を受けることが、脳の健全な発達には必要不可欠です。しかし、この時期に極度のストレスを感じると、子供のデリケートな脳は、その苦しみに何とか適応しようとして、自ら変形してしまうのです。生き延びるための防衛反応だともいえます。これは悲しい、そして驚くべき事実です。
マルトリートメント:
・・・「虐待」という言葉がもつ響きは強烈で、ときにはその本質を見失う恐れがあるためわたしたちの研究では、強者である大人から、弱者である子どもへの不適切なかかわりかたを、「虐待」とは呼ばずに「マルトリートメント(maltreatment)」と呼んでいます。
・・・社会に適応しづらい青少年や成人が生まれる背景には、子供時代に受けたマルトリートメントがあったのです。
子どもの脳がもつ回復力を信じて
・・・またこうした変形がもとで損なわれた脳の機能は、修復できないのでしょうか。いえ、そうとは限りません。最近の脳科学研究では、「脳の傷は癒やされる」という事例が多く報告されています。
○「精神病を"会話"で診断するなんてもう古い!」 83,000個の脳をスキャンしてわかった、精神病の正体
Daniel Amen
精神病の診断のほとんどは精神科医が患者と話すことで診断していますが、それだけでは不十分だとダニエル・アーメン博士は語ります。93か国、8万3000人もの脳をスキャンしてきた彼は、トラウマによって脳に損傷が起きることを発見します。アルツハイマー、認知症、てんかん、ADHDの脳の状態もスペクトイメージングによって確認することができます。博士の研究によって、従来の精神科では一括りにされてきた「うつ病」も、患者達によって脳内の実態は様々であることがわかってきました。「心の病」に脳からアプローチする、新たな治療法の可能性を語ります。
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鈴木咲衣氏とのやり取りをきっかけに精神障害を抱えた当事者たちの自分達を主体とした回復を目指した「ベテルの家」という団体について知ることができました。もっと詳しく知りたくなって次の本を購入したのですが、特に最後の「「脳」から「農」へ」という章が興味深かったです。そこでは、自然が本来持っている力を信じることの大切さが強調されていました。
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◯技法以前 べてるの家のつくりかた
終章 「脳」から「農」へ
・ベテルはほかほかの黒土です
・「農」への関心
・無農薬・無肥料という狂気の沙汰
・「脳」は「農」に学べ
・
本来持っている力を取り戻す
川村先生が“低脳薬”にこだわるのは、現実の苦労を奪わないためだという。「苦労が増えたほうがいい」というその考え方は、木村さんのリンゴ栽培に置き換えると、薬の力に頼って休んでいたリンゴが本来もっている力=自然の力を呼び覚ますことにほかならない。
・現実の苦労の中に答えがある
・「リンゴが主人公」という"非援助"の思想
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発達障害(自閉症スペクトラム)の人の中には偶然のめぐり合わせによって素晴らしい能力としてそれが発現する人がいます(サヴァン症候群)が、大部分は社会の不適合者として行きづらい人生を送ることになるのです。
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○10の魅力的才能を持つサヴァン症候群の人々
最高に魅力的で人間味溢れた心を持つ持ち主として、サヴァン症候群の人々があげられることがある。知性を司る部分に授けられた驚異的な才能を披露するその人々は、一方で別の部分に知的障害を背負っていることも多い。
サヴァン症候群の人々の知性は1つないしは2つの特定の部分に焦点を合わせている。ある研究者が述べたように、知的障害者の海に点在する"天才の島"のようなサヴァン症候群の脳の中は、単純に他の人とは違う形で整理整頓されている。サヴァン症候群は人間の頭脳は私たちが考えているより広大で、未開の地があることを証明しているのだ。
○僕には数字が風景に見える
ダニエル・タメット
「アスペルガー症候群の人たちは友だちをつくりたいと心から思っているが、それがとても難しいとわかっている。ひとりぼっちだというひりひりする感覚を心の奥で感じていて、それがぼくにはとても辛かった。友だちがいない代わりに、ぼくは校庭の樹木のあいだを歩くときにいっしょにいてくれる友だちを想像でつくった。」
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森田真生氏は哲学者アンディ・クラークの「脳と身体と世界の再統合」に関する見解を数学に適用しそこから岡潔の数学を捉えようとしています。ところで数学をする能力は人間のDNAに刻み込まれたものである(:具体的にうと「言語を操る能力と同じもの」)と言う説があります(「数学する遺伝子」)。
個人的には数学のDNAとこの森田氏の視点を更に統合することができるのか、と言うテーマに興味があります。なお、多くの数学者には発達障害(自閉症スペクトラム)・アスペルガー症候群の傾向がある、と言っていいと思います。この実感がここまでに挙げたテーマにつながる、という直感はあるのですが、それをまとめきることができませんでした。
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○数学する遺伝子
キースデブリン
人類が抽象的な数の概念を持ち始めたのは今から8000年くらい前のこと,
また形式的,記号的数学については2500年あまりの歴史しかない
微積分学ができたのは17世紀,
負の数が広く用いられるようになったのは18世紀,
抽象的な代数学ができたのは150年ほど前
人間の脳は350万年かかって今の形に進化した.
疑問:なぜこんな短期間に数学はこんなに発展したのか
(5000年は人間の脳が進化するには短すぎる)
結論:誰でも数学の遺伝子をもっている.数学をすることを可能にしている脳の特性は,言葉の使用を可能にしている特性と全く同じものである.
疑問:ではなぜ数学ができない人がこれほどたくさんいるのか?
そもそも「数学」とは何なのか?
○数学する身体
森田真生
「数学的思考は、あらゆる思考がそうであるように、身体や社会、さらには生物としての進化の来歴といった、大きな時空間の広がりを舞台として生起する。脳内を見ていても、あるいは肉体の中だけを見ていても、そこには数学は無いのだ。」
ミラーニューロンについて
「この実験は、私たちの心がいかに他者と通い合い、共感しやすいものであるかをまざまざと示している。脳の中に閉じ込められた心があって、それが環境に漏れ出すのではなくて、むしろ身体、環境を横断する大きな心がまずあって、それが後から仮想的に「小さな私」へと限定されていくと考えるべきなのではないだろうか。」
「既に何度も強調してきたように、人間の認知は、身体と環境の間を行き交うプロセスである。その結果として、記号化された計算によっては到底追いつかないような判断や行為が瞬時になされる。・・・数学的思考もまた、この例外では無いはずだ。
・・・数学的思考の大部分がむしろ、記号的な、身体のレベルで行われているのではないか。だとすれば、その身体化された思考過程そのものの精度を上げるー岡の言葉を借りるならば「境地」を進めるーことが、ぜひとも必要と言うことになる。」
○日本の心
岡潔
○現れる存在ー脳と身体と世界の再統合
アンディ・クラーク
付録より
・・・「今日の講義で私がお話しようと考えているのは、なぜ人々が新体制や人工生命のアイディアに関心を持つかだけではなく、なぜ哲学者がそうしたアイディアに注意を払わなくてはならないのかということについてです。」
・・・「人工進化に関するちょっとしたお話から始めることにしましょう。・・・それはエイドリアン・トンプソンとサセックスの研究グループによる仕事で、彼らはそれを「進化電子工学(evolutionary electronics)」と呼んでいました。・・・そしてまた興味深いのは、およそ四〇〇〇世代のちにもっとよく進化した実世界チップがそのタスクをこなしたということです。・・・これを行うチップが得られたこと自体はそれほど驚くべきことではありません。・・・そのチップは・・・通常では機能するはずのないものだったのです。」
・・・「自然はほんとうにこだわりがない」
・・・「この乱雑で漏れ出しやすい性質の探求に挑み、それが人間の心を説明し理解する試みに何を示唆するのか問うこと」
・・・「それでは、身体・行為・世界から心を説明する試みをお話していきましょう。最初は身体です。身体は私達のために何をしてくれているのか、という観点から重要なアイディアがもたらされます。それはコントロールや情報処理が脳の中枢神経系だけの機能ではないということです。」
・・・「コントロールをこうした新しいシナリオのもとでは次のようにとらえることができるということです。それは
コントロールとは複雑系をそっと一突きすること
だというとらえ方です。」
→コントローラーの処理が身体に漏れ出す
「彼らは2つのグループに言葉のリストを覚えさせた後、数学の問題をどうやって解いたのかを説明させ、その後で言葉のリストを思い出させました。一方のグループは説明のときに自由にジェスチャーを使うことが許され、他方はそれを使ってはいけないと指示されました。その結果わかったのはジェスチャーの使用を許されたグループは許されなかったグループよりはるかに良い成績を出したのです。」
・・・「私達はジェスチャーをするときに何か具体的なものを世界の中に生み出している、あるいは、マニクールが言ってように自分達の考えを実体化しているのではないでしょうか。」
→認知は行動知覚ループ全体に漏れ出す
・・・「クロマグロなど一部の海洋生物の水中でのパフォーマンスは、彼らの物理的能力を凌駕していることがわかっています。」
・・・「マグロがより速く泳げるように自分の世界を構造化するのと同様に、私たちは思考が漸次的により優れたものになるように正世界を構造化しているのです。」
→認知は身体だけではなく世界、中でも特に外部のシンボル構造や図式表現などの世界にも漏れ出している。
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アンディ・クラーク氏が言及している「進化電子工学」で実現されたチップについて調べてみました。
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○Evolutionary Electronics
Thompson’s experiment