2012年12月27日木曜日

数学への応援歌(森元氏の投稿)

森元予想

http://fuzokukouchou.blogspot.jp/2012/05/blog-post_08.html

を提案された森元氏が研究者のためのメーリングリストに次のような
投稿をされています。ご本人の許可が得られましたのでここに転載
させていただきます。

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風向き


結び目理論関係者の皆様
 
 今週、早稲田大学での「結び目の数学V」に出席しました。集会は若い学生さんや研究者で賑わっており、とても盛況でした。その懇親会における冒頭の挨拶で、河内明夫先生が、「結び目理論は様々な数学を巻き込み、自然科学とも深く関わり、今後100年は発展し続けるでしょう」と力強く宣言されておりました。もちろん、若い人々を勇気づけ激励する意味もありますが、ここ最近、数学を取り巻く環境や風向きが、少しずつ良くなってきたと感じております。
 というのは、1990年代後半から10年余り、情報科学の急激な発達と、学問よりも実学重視の風潮を受け、いくつかの大学で数学科が縮小や廃止され、教員のポジションも削減されました。そして数学は「忘れられた科学」という名で呼ばれるなど、若い人々が数学に夢を持てない状況が広がっていました。私はそのような状況を表した文章を、「数学の本丸と外堀」と題して、メーリングリストに投稿しました。つまり、中堅大学という外堀が埋められ、数学ができるのは東大・京大を中心とする本丸とその周辺のみとなり、いずれ孤立し発展が妨げられるというシナリオです。
 当時、ある有名な先生は「数学はいずれ文化庁に保護されなければ存続できなくなるかもしれない」などとぼやいておられ、私は、奈良女子大学の小林毅さんと「今は逆風の中打って出るときではなく、火を消さないように守るときだ」などと言っておりました。ところが、各企業がコンピュータを使える人材を渇望した時代が終わり、誰でも使えるのが当たり前という時代になると、より高いものが求められるようになり、物事を根本から考えることができる人材が求められるようになりました。それは汎用性のある人材であり、まさに、数学の考え方です。そして、このような要求が企業の方から出てきていることが、数学への追い風となります。
 数学を学んだ人が、教員や研究者だけでなく、技術やビジネス、福祉、さらには政治でも活躍することにより、社会全体が数学を学んだ人は多方面で活躍できるという認識を持つようになると思います。数学だけを発展させるのであれば、一部の天才的な人だけでよいかもしれませんが、幅広く社会に浸透し、多くの人々に文化として支持され、発展させるためには、数学力のある人こそ有用な人材であるということが、広く知れ渡る必要があるでしょう。数学を学び、その普遍性を身につけ、一方で時代の変化に柔軟に対応し多方面で必要とされる人材こそが、これからの数学人の一つの姿であり、先日集まった若い人々に、その可能性を十分に感じることができました。
 どうぞみなさん、本丸から外堀、そして一般社会まで、数学に関わる人々がそれぞれの努力をすることにより、数学の未来を築いていきましょう。そして、少しずつ変わりつつある風向きを、さらにによい方向に向けるよう、来年もがんばりましょう。
 それではよい新年をお迎えください。
 
甲南大学知能情報学部 森元勘治