2012年7月20日金曜日

数学者をめざす君に(3)

数学のあり方はこれから大きく変わるのではないか、
と感じています。

具体的には、これまでの様々な技術を支えるための
道具としての機能が強調されていた数学ですが、
これからは様々な現象を記述する言語としての役割が
強調されるようになるのではないか、と思っています。


そこで必要とされる数学的能力は決まりきった計算を
早く正確にこなすことではなく、様々な現象を
数学的定式化をしてそれを解析出来る能力ではない
でしょうか。

一方、少し極端なことを書きますが、現在の数学科で
教えているような専門化した数学は一部の大学で伝統
芸能のような形で残っていくのではないか、と思います。


さて、なんだか景気の悪い話になってきましたが、
決して君を落胆させるつもりはありませんので。
私が言いたかったのは、数学の研究者をめざすなら、

出来れば数学の勉強はもちろんですが、それ以外の
分野、それもできれば一見数学とは関係ないような
分野に興味を持って欲しい、

ということです。労力は大変ですが、それはきっと
単なる二つの分野の足し算以上の大きな成果につながる
でしょう。

2012年7月19日木曜日

音楽教育の目標


平成10年告示の学習指導要領では、中学の音楽教育の目標を
次のように定めています。

(1) 音楽活動の楽しさを体験することを通して,音や音楽への興味・
関心を養い,音楽によって生活を明るく豊かなものにする態度を育てる。

(2) 音楽表現の豊かさや美しさを感じ取り,基礎的な表現の技能を身に
付け,創造的に表現する能力を育てる。

(3) 多様な音楽に興味・関心をもち,幅広く鑑賞する能力を育てる。

私なりに解釈すると:
(1)は生徒が「音楽って良いなあ」と感じることが出来るように
すること。
(2)は、歌ったりを自分で演奏したり出来るための、技術をみにつけ
されること。
(3)は、音楽を単に聞くだけでなく、その背景にある文化や歴史など
もふくめて、その音楽の意義を理解できること。
ということになるかと思います(若干、受け売りもあり)。

これって、音楽を「数学」に置き換えても、十分に説得力があるのでは
ないでしょうか。

2012年7月18日水曜日

数学者をめざす君に(2)

振り返ってみると、私が数学を目指し、そして大学の数学科で
数学を学び研究を始めた頃は、数学の黄金期であったように
思えます。私の関係する低次元トポロジーでいうと、Thurston
(1983年Fields賞)による三次元双曲幾何学の発展、Freedman
(1986年Fields賞)による4次元ポアンカレ予想の解決、そして 
Jones(1990年Fields賞)によるJones多項式の発見など自分の目の
前でまさしく数学の歴史が作られているという事が実感できまし
た。
その後の数学の発展はどうであったか、・・・私にはその評価を
する資格も能力もありませんが、少なくともFields賞の発表を
あの頃ほどにわくわくとして待つ、ということは無くなってしま
いました。

2012年7月17日火曜日

数学者をめざす君へ



数学者をめざしたいという君に私から一言アドバイスをしたいと思います。

まず数学の現状についてですが、私は、

今現在、数学は、すこし前進の速度を落として、過去を振り返って、
これまでの成果に対する整理をすべき時期にあるのかもしれない


と感じています。数学は20世紀に大きくその研究対象を拡大しました。
19世紀までは初等幾何学、そして方程式の解法に関する代数学そして
物理学と結びついた解析学が数学のほとんど全ての研究対象でしたが
20世紀に入って数学は微分幾何学、位相幾何学、関数解析学、群論を
始めとする抽象代数学といった、様々な、新しい分野を生み出し、それ
らが更に影響をし合って新しい分野を生み出す、というように,
それまでの2000年以上に渡って生み出したものの何十倍何百倍もの
数学が生み出されたのです。

数学はその各分野で驚異的な発展を遂げ、個々の分野があまりに専門化
したために個人が数学の全体像を捉えることはもはや不可能になってし
まいました。このままでは数学はそれぞれの分野が全く独立に発展して
全体として発散してしまう・・・そのような恐れがあると思います。

数学の研究はこれからどんどん変わっていく、と言いますか、変わって
いかなければならないのだと思います。

2012年7月11日水曜日

ある質問への回答

××新聞〇〇様、

お電話いただいたのに不在にて失礼しました。

ご質問の件についてですが、
「③女性研究者の活躍の促進」については
第4期科学技術基本計画にも挙げられているところ
です。〇〇様の挙げられている動機付けは全く
そのとおりなのですが、少し補足させていただきたい
と思います。
女性研究者の活躍がなぜ大切なのか、その理由を
一言で言うなら

「現在の科学技術に関わる人々の持っている閉塞感を
打ち破る鍵となる」


ということになるのではないでしょうか。以前企業の
の方の講演の中で「多様性の持つ活力の活用」という
言葉が出てきて非常に印象に残りました。ここで
「多様性」というのは、例えば外国人の視点であるとか
女性の視点というようなものを指しています。その方の
話によると、これからの企業の生き残りにとっては、この
ような活力を活かすことが決定的であると考えておられ
るようでした。
その一方で、女性の活力を活かすことが一番
遅れているのは学問特に理系の学問分野であるように
思います。そういった意味で女性の研究者を増やすとい
うことには、単にそこから出てくる様々な直接的
メリット(キャンパスに活気が出てくる、優秀な
理系研究者が確保できる)以上にその学問分野の
これからの発展にとって決定的な意味があると
感じています。

以上ご質問への回答になっているのかわかりませんが
取り急ぎお返事させていただきます。

2012年7月5日木曜日

科学講座台本:空間の向き(4)


2次元の矢印ですが、このように2次元空間を四角形で分割してたとえばこの矢印を(2,4)という数字でこの矢印を(1,3)という数字で表してやることにしましょう。この二つの矢印のなす向きの大きさを計算するにはどうしたら良いでしょうか?この向きの大きさを[(2,4),(1,3)]のように書くことにします。

このときこの二つの矢印の作る平行四辺形の面積は次のような方法で求めてみます。まず(2,4)の矢印の長さを半分にしてやると(1,2)になります。この(1,2)(1,3)は図のように底辺の長さが1、高さが1の三角形を作っています。よって、この三角形の面積は(1/2)×1×1
1/2ということになります。よって[(1,2),(1,3)]はこの2倍で1ということになります。よって[(2,4),(1,3)]はこれの更に2倍で2と言う事になります。

  

この考え方を更に一般化してみましょう。[(a,b),(c,d)]の値を求めたいと思います。但し(a,b),(c,d)はそれぞれ図のような矢印を表しているとします。この時上の考え方と同じ方法で考えてそれぞれの矢印の長さをa分の1倍、c分の1倍して図のようにしてやります。この時できる三角形の底辺の長さは・・・いくつですか。そう(d/c)-(b/a)ですね。また高さは1よって三角形の面積は(1/2)×((d/c)-(b/a))×1です。従って平行四辺形の面積は(d/c)-(b/a)。ところでこれは元の面積をa分の1倍かけるc分の1倍したものになっていますので結局

[(a,b),(c,d)]= ac((d/c)-(b/a))=ad-bc

となることがわかります。





実はこれはこれから皆さんが数学の授業で習う行列式という概念なのです。行列式については教科書ではそのイメージが書かれていませんが、実はこんな解釈ができるのです。皆さんがこれから行列式について勉強することになったとき、今日の授業のことを思いだしていただければうれしいです。

数学講座台本:空間の向き(3)


それでは、同じような考え方を2次元ですることを考えましょう。2次元の空間の中のこのような二つの矢印(辺の長さが1の正方形の2辺になっている)は正の向きの代表、このような二つの矢印(同じく辺の長さが1の正方形の2辺になっている)は負の向きの代表ということができます。そこでこのような二つの矢印の絵を四角で囲ってこれには1という数字、こちらの二つの矢印には-1という数字を対応させてやることにしましょう。つまりそれぞれの「向きの度合い」は1と、-1となっているというわけです。
このとき、このような二つの矢印(長さ1と2の長方形の2辺になっている)とこのような二つの矢印(長さ2の正方形の2辺になっている)の向きの度合いはどのようになっていると考えるのが良いでしょうか?
・・・
はい、こちらは2でこちらは4ですね。そう考えると向きの度合いと行ったときそれは何を表していると言えるでしょうか。そう、これはこの矢印を2辺とする長方形の面積を表していると言えますね。




ではこのように二つの矢印が直角をなしていないときはどうすれば良いでしょうか?このときはこの平行四辺形の面積を対応させれば良いような気がしますが、皆さん納得できますか。とりあえずこれで問題は無さそうなのでこのまま進んでいくことにしましょう。

2012年7月3日火曜日

数学講座台本:空間の向き(2)


今日はこのような性質の違いを数学的に表す方法について考えてみたいと思います。さて

数学者という人間は、物事を見るときに、なるべく単純化して見る

という性質があります。この炭素原子を考えるときも、どの場合もどうせ中心には炭素原子があるのですから、これは無いとして考えてもかまいません。その時に1,2,3,4の原子をどのようにおけるか、という問題を考えるに当たって正四面体の頂点のところにそれぞれの原子を置くと考えれば良いことがわかります。また正四面体をこのように置くとき1の原子はこの一番上の頂点にあるとしても構わないですよね。これを特別な点と考えてここから2,3,4の原子に向かって矢印が伸びているような図を考えてみてください。これがどうも鏡に写った世界を現す最も単純な構造のような気がします。

 
 






では空間の中の話をする前に話を少し簡単にして平面の世界で何が起こっているのか考えて見ましょう。平面の中の双子物質を特徴付けるのは2本の矢印のような気がします。こんな感じですね。こちらが1番の矢印、これが2番の矢印とするとこのように矢印を並べた場合とこのように並べた場合では並びが違いますよね。こちらからこちらに移ろうと思うと一度矢印が一直線の上に並んでしまいます。いいですか、これからこのようなことを、数字を使って表現したいと思います。



 








数字を使うための準備として更に簡単な世界の話をしましょう。平面より簡単な空間というと何ですか?直線ですよね。直線の上の矢印を考えてください。これは右向きの矢印、これは左向きの矢印です。右向きの矢印をこのように数直線の上に描いて、その長さが1のときはこの矢印に1という数字を、長さが2のときは2という数字を当てはめてやります。では左向きの矢印はどうしましょうか。ここで左向きの長さ1の矢印には-1という数字を、左向きで長さ2の矢印には -2という数字を対応させてやります。この数字を、矢印を四角で囲んでこういう風に書いてやることにしましょう。この四角で表される数はどんなものかちょっと絵を描いて考えて見ましょう。例えば右向き長さ1の矢印の長さがだんだん短くなって長さ0になってそれから左向きの矢印に変わってだんだん左に伸びた矢印に変わってゆく様子を考えてください。このときにこの四角で囲んだ矢印で表される数字は最初1でだんだん小さくなって0になってマイナスの数になってだんだん小さくなってゆきます。この絵からこの数字は1次元の矢印の「向きの度合い」を表していると行ってよいことが分かるでしょう。