
という量をその結び目のトンネル数の増加度と呼び、この論文の中で
その性質を調べています。そこから導かれた結果として非常に面白か
ったのは:
もしも小さな結び目でその増加度が1/2より大きなものが存在すれば
森元の予想の反例を構成できる(’’小さな結び目’’の定義は省略さ
せてもらいます)
というものです。実は森本‐作間‐横田の結び目は増加度が丁度1/2に
なることがごく最近証明されましたが(実は、まだ少しだけ不確実な
点が残っているのですが)、この結果は森元‐作間‐横田の与
えたものよりちょっとでも増加度の意味で複雑な結び目が存在すれば、
森元の予想の反例が作れるというもので、このあたりから森元の予想が
私たちにとって手に届く問題になってきたのです。ただしこの増加度が1/2
より大きな結び目が存在することの証明についてはどうやってよいのか
わからないという状態でした。そこで私たちはこの論文の中でこのような
結び目が存在したとしたらそれらが満たすべき条件をあげてこのような
結び目は存在するのか?という問題を挙げたのです。自然な問題だとは
思いますがこの問題が解けるのにどれくらい時間がかかるのか私には
まったく見当がつきませんでしたが事態はその後急展開します。私たちの
論文が発表されて間もなく、Munoz, Johnson-Thompson, Minsky-Moriah
-Schleimerという一人と二つのグループが立て続けにこの問題の条件を
満たすような結び目の存在を証明したのです。この事実の証明に使われ
たのはHeegaard分解の距離と呼ばれる概念で、これは2001年の論文の
中でJohn Hempelという人が定義した概念で取り扱っている三次元多様体
の複雑さを非常によく反映する概念であることがその後明らかにされてゆ
きます。
Hempel, John. 3-manifolds as viewed from the curve complex. Topology
40 (2001), no. 3, 631--657.
と大体これが2006年中ごろの状況ですが、後で振り返ってみると実はこの
時点で森元の予想が解けるための条件は完全にそろっていたんですね。