2012年5月8日火曜日

森元予想


森元予想
さて私が研究しているのは低次元のトポロジー特に三次元多様体論
とよばれるものです。具体的には、ひもが結ばれてできる結び目な
どがこの対象となります。今日はこの結び目の研究に関して私が最
近発表した一つの仕事についてご紹介したいと思います。

2000年にMathematische Annalenという雑誌に現在甲南大学におられ
る森元勘治さんという方が結び目に関する論文を発表されたのです
が、この中で森元さんは結び目のある性質に関する予想を提出され
ました。まず予想の内容を簡単に紹介しましょう。

Morimoto, Kanji On the super additivity of tunnel number of knots. Math. Ann. 317 (2000), no. 3, 489--508.



数学で取り扱う結び目というのはこの図のように両端を閉じた輪に
なっています。このような結び目が二つ与えられた時、それらの一
部をこの絵のようにつなぎなおすことにより新しい結び目を作るこ
とができます。このように結び目  、K1, K2 から新しくできた結び目
を「 K1 と K2  の連結和」と呼び K1 #K2  と表したりします。


結び目に対してはトンネル数と呼ばれる量、これは  t(K) とあらわし
ます、が対応します。このトンネル数は結び目の連結和に関して

t(K1 #K2) ≦ t(K1)+t(K2)+1

という不等式を満たすことが知られていますが、特に等式

t(K1 #K2) = t(K1)+t(K2)+1

を満たすときにトンネル数は超加法的である、と言います。このよう
な超加法的な結び目のペアが存在すること自体かなり驚異的なことで
この事実は1996年にやはり森元さんと、当時大阪大学におられた作間
さんと九州大学おられた横田さんという方々が共同で量子不変量と呼
ばれる概念を使って初めて証明されました。さて問題の予想ですが、
森元さんは論文の中でこの様にトンネル数が超加法的な結び目のペア
はある特別な性質を必ず持つということを証明され、さらにこの逆も
正しい、つまりこの結び目のペアがある特別な性質(1bridge genusが
トンネル数に等しい)持つならば必ずトンネル数は超加法的になると
いうことを予想されました。