ホモ・デウスによる支配を超えて
2005年にレイ・カーツワイル(*)が「シンギュラリティは近い」という本の中で2045年にはAIの発達はAIの能力が人間を超える(シンギュラリティ)ようになる、と述べました.この本は一つのきっかけですが、いまAIのあり方について脳科学者、哲学者を巻き込んだ論争が行われています.
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(*)レイ・カーツワイルはアメリカ合衆国の発明家、実業家、未来学者。人工知能研究の世界的権威であり、特に技術的特異点(technological singularity)に関する著述で知られる。
発明家としては、OCRソフト、フラットベッド・スキャナー、"Kurzweil"ブランドのシンセサイザー、文章音声読み上げマシーンなどを開発している。(Wikipediaの記述を要約)
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このような議論の中心にいる一人がエジンバラ大学の哲学教授アンディ・クラークです。クラークは彼の著書「現れる存在」の書き出しで次のように述べています。
アンディ・クラーク「現れる存在」1頁
我々が作り出した最高の「知的」人工物は、なぜいまだに、言いようもなく手の施しようがないアホなのか。一つの可能性は、我々が知能(知性)そのものの本質を全く誤解しているということだ。
クラークは人間の知能の本質とは何か,という問いかけに対して「拡張された認知」という概念を提案しています。クラークの見解に賛同する人の一人にレスブリッジ大学心理学教授のルイーズ・パレットがいます.彼は,その著書「野生の知能:裸の脳から,身体・環境とのつながりへ」の中でメスのコオロギが結婚相手を探すにあたって,オスの鳴き声からオスのいる方へどうやって近づくのか,そのメカニズムはコオロギの鼓膜が前足の肘の部分にあることと気門で音を感じていることが重要な役割を果たしており,この構造のおかげでオスに近づくという,行動をわずか50個程度のニューロンによって実現していることを紹介しています.つまり,この身体的な構造が,コオロギにとってのフレーム問題(*)を解決する鍵となっているのです.
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(*)フレーム問題とは、人工知能における重要な難問の一つで、有限の情報処理能力しかないロボットには、現実に起こりうる問題全てに対処することができないことを示すものである。(Wikipediaより)
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これは、先天的にもっている「拡張された認知」の例ですが、このような能力は後天的に身につけることもできます。例えば猿に手の届かないところに置かれた食べ物を熊手を使って手元に引寄させる、という訓練をすると、やがて脳内のニューラルネットワークの繋がりに変化がおきてこの熊手が脳地図に組み込まれる。その結果この猿にとって
「熊手は身体化された」、
言い換えるとこの猿は
「拡張された身体を獲得した」
と言えるのです。
さてIBMはAIを「Artificial Intelligence(人工知能)」ではなく「Augmented Intelligence(拡張知能)」ととらえている、と述べています。(*)
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このようにAI(人工知能を)「AI vs 人類」という文脈ではなく「人間の知能を拡張する仕組み(拡張知能)」と捉えようとする動きが最近出てきています。(*)
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(*)東京大学の國吉教授はさらに一歩進めてBI(Beneficial Intelligence:人間の利益になる知能)という表現を用いています。
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私は、Society 5.0の本質は、この「拡張知能の獲得」にあるのではないか、そしてそれは認知革命や科学革命に匹敵する世界観の変革ではないのだろうか、と捉えています。
ではこの拡張知能は私達にどのような未来を与えてくれるのでしょうか。

ではこの拡張知能は私達にどのような未来を与えてくれるのでしょうか。
