2014年2月24日月曜日

SSH発表会の講評から

本日発表くださった皆さん、どうもご苦労さまでした。
どれも楽しい内容で本当に楽しませてもらいました。
ありがとうございました。
実際の皆さんの発表は、内容は別としてそのプレゼンテ
ーションスキルという面では、大学や大学院の学生が行
うものに優るとも劣らない、というレベルにあると言っ
て良いと思います。もちろん、みなさんはまだ本格的な
学問の世界に入っているわけではないのですから、先程
からいろんな先生から指摘されているように、気をつけ
るべきことはまだまだあることは事実です。そのような
ことについては先生方のコメントを参考にして勉強を更
に進めてもらえればと思います。

ところで今日私は、この講評の場でこのような見方とは
全然別の観点のメッセージをお伝えしたい思います。
まず、現在国が求めている科学者像というお話です。政
府は平成23年に「第4次科学技術基本」を閣議決定し
ました。これはこれからの日本の科学技術に関する政策、
これは科学者の育成、つまり科学教育、も含みますが、
の方向性を定めたものです。ところで、この平成23年
という年は何があったか、憶えていますか。そう、3.
11東日本大震災の年です。じつはこの第四次科学技術
基本計画は震災前にほぼ完成していたのですが、震災を
受けてその内容に大きく手が加えられました。
(具体的にどう変わったか興味のある人は
http://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20110707/sanko2.pdf
を御覧ください。)
その中でも特に大切なことは「社会とともに創り進める
政策の展開(上記資料40ページ)」だと感じています。
さていま国会で審議中の来年度予算ですが文部科学省は
「科学技術を担う人材(つまり、みなさんのような人材
ですね)の育成」に多額の予算を要求しているようです。
具体的には
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2013/08/30/1339148_4.pdf
を御覧ください。
ところでこの文書を見ていると、どうも文科省はこのよ
うな人材の育成をすることに関して、大学以外に大きく
期待しているように見えます。私は大学側の人間ですか
らこのような動きはちょっと困ってしまいます。「もう、
大学は古い。大学には理系の人材育成はあまり期待して
いない」なんて言わているとすると、困ってしまいます。皆さん
もそうですよね、これから大学に行こうとしているのに、
文科省に「実は私達は大学にはあまり期待していないの
です」なんて言われると、「じゃ、どうしろと言うの?」
という事になってしまうでしょう。(もちろん学問を極
めようと思えば大学に行く、この態度は変わることはな
いでしょうが。)
ところで、皆さんはバックキャスティングという言葉を
ご存知でしょうか。バックキャスティングというのは、
今のままでいてはどうしても破綻する、という問題、例
えば環境問題なんかがそうですね、を考えるとき、目標
となる未来をまず設定してそこから現在に向かって逆に
時間をたどっていって今私達は何をすべきなのか、と考
える物事の進め方のことです。
私はこれからの時代、本当に多くの人に貢献できる人材
が生まれるためには、高い問題意識を持った(例えば東
日本大震災からの復興を考えるといこともその一つでし
ょう)理系人材がバックキャスティングで自分の学びを
デザインすることが大切であると思います。例えば、震
災からの復興に新しい画期的エネルギー源という方法で
貢献したいと考えたとします。そのために現在よりはる
かに効率のよい発電技術を開発する、そのためにはこの
先生のもとで研究する、そのためにはこの大学に行く(そ
れは必ずしも日本の大学ではないかもしれません)その
ように自分のラーニング(学び)をデザインできる力の
重要性が急激に高まってきているように思います。


さて、私は最近よく感じていることがあります。
それは、このSSHというのは皆さんにとっては、自分た
ちの人生に対してそれをバックキャスティングで考える
良い機会を与えてくれているのだ、ということです。皆
さんが今日発表して、またそのような発表を聞いて感じ
た点については、どうか単なる知識やスキルの積み上げ
とは捉えないでほしいと思います。皆さんは今日のよう
な活動を自分で体験し、また直接は参加していないけれ
ど、この場でこのような活動について発表を聞いたわけ
ですが、それを自分自身のラーニングデザインのために
利用してみてはいかがでしょうか。そのように考えるこ
とによって、皆さんの進路に対する取り組みの活動がよ
り豊かになったとしたら、こんなうれしいことはありま
せん。