2014年1月30日木曜日

数学の研究と数学者(3)


学問の世界で間違った結果を発表するのは気まずいも
のです。特に、数学のように純粋に理論的な世界では、
それは「自分の能力不足の証拠」を公開している気分
になるものです。私達はこの問題点を修復しようと必
死になりました。ただ、経験的に言えることですが、
このような冷静さを失った精神状態で仕事をしても、
有益な結果が出ることはあまり無いようです。この時
も、しばらくもがいた後に結局、方針を変更して議論
の設定を根本的に変更することにしました。このよう
に書くとあっさりと考えを変えたように聞こえますが、
この決断をするのはかなり難しかったように記憶して
います。実際のところ私自身は「私達の論文はQ先生
達の論文とほとんど同じ内容になってしまう」と感じ
ていましたが・・・とにかく私達はQ先生の論文を参
考に自分たちの手法を書き直す作業に入りました。

ところが、実際に作業を始めてみると、それまでの間
違った証明の考え方も含めて、研究に関連して調べた
他の論文の結果などがきれいに一つの証明に収束して
いったのです。早速論文をQ先生、Zさんにお送りしま
したところ、今度はZさんから「すばらしい」という
返事が届きました。

まとまった論文の結果は依然としてQ先生の論文より少
し弱いものでしたが、自分たちが到達した議論につい
ては、たとえsecond hand であっても公表する価値が
有るかもしれない、・・・そんな考えも一方で浮かん
できました。