本日は、ご来賓や保護者の皆様をお迎えし、第112回卒業証書授与式を挙行できますことは、生徒、職員一同にとりましてまことにありがたく大きな喜びとするところであります。
ご臨席の皆様方に、心から感謝申し上げます。
また、この間、お子様を育み、支えてこられた保護者の皆様方には、改めてお喜び申し上げます。
卒業生の皆さんは、希望を胸に、新しい道へと進んで行かれます。
皆さんのこの門出にあたり、私からお祝いの言葉お送りしたいと思います。
さて、今世界は「分断」と「対立」という問題に苦しんでいます。例えばお金持ちと貧乏な人の収入の差はこれまでになかったくらいに大きくなっています。その結果、下の人たちは
「私たちのことを理解できない、上の人よりも、強力な権力を持った私たちを理解してくれる人に力づくで世の中を良くしてもらおう」
というやり方を期待するような動きが目立っています。このような時代に、皆さんはどのように生きていくことを目指すべきなのでしょうか。
一つは上の方の人になることを目指すこと、ということです。ほんの少数の上の人になることによって幸せになれるという考え方です。またそれとは逆に下の人々をまとめる人間になって力づくで世の中を変えていく、という考え方もあるでしょう。しかし先生にはこのようなやり方は、どちらにしても、正しいとは思えないのです。
今日は、このような問題について最近先生が考えていることについてお話ししたいと思います。
今から65年前の1958年、この年は先生の生まれた年でもあるのですが、ロシアのベリャーエフという学者は、ギンギツネというとても凶暴なキツネを人を懐くようにするのにどれくらい時間がかかるのか?ということを調べ始めました。ギンギツネ(以下「キツネ」とします)は人が手を出すと指を噛み切ってしまうくらいに乱暴で絶対に人には懐かないだろうと言われていました。
ベリャーエフは人間に興味を持つキツネ同士の子供を生ませ、その子供から生まれた子供の中から人間に興味を持つもの同士からまた子供を産ませるというということを繰り返しました。すると、たった6年後には人間に懐くキツネが生まれてきたのです。動物が変化するには何十万年とか何百万年かかるのが、常識ですからこの結果に研究者達はびっくりしました。
ところでこの人に懐くようななったキツネは性格だけではなく体の形も変わっていきました。体は小さく、骨も細くなってしまました。このように、人に懐くようになったキツネは、力が弱くなってしまったように見えました。実際、昔の荒々しかったキツネと1対1で喧嘩をしたら、必ず負けたことでしょう。ところが、今から20年ほど前の2003年にブライアン・ヘアというアメリカの学者が、人懐こいキツネと荒々しいキツネの頭の良さを比較する実験を行ったんですね。そうすると人懐こいキツネの方が、いろいろな問題を解決できることが分かったんです。
さて、先生にはこのキツネの実験が
私たちがみんなで力を合わせること、そしてそのためにはみんながお互いに理解をしあおうとすることが大事だ
と教えてくれるように見えます。
自分と違う人たちとも、ちゃんと話をして、話を聞いて、お互いに尊重しあって、一緒に問題を解決することでいい未来がつくれる、そしてそれにはそんなに長い時間は必要ない、
と言っているように思えるのです。ところで振り返ってみると皆さんは本校で六年間毎日
おはなし、つけたし、おたずね
を、そして授業中には
めあて、ふりかえり
を繰り返してきましたね。そのやり取りの中で皆さんは人の話を聞きながら
「あの子のお話をもっと知りたいから、こんあおたずねをしてみよう」
などということを考えたのではないでしょうか。このようなやり取りを通して皆さんは人の話をちゃんと聞いて、一緒に問題に取り組む力を身につけてきたのだと思います。
さて、最初の話に戻りましょう。いま世界は「分断」という難しい問題を抱えています。このような時代に皆さんは
人とのやり取りと協力を通して問題を解決をしていく力
という宝物をもって飛び立っていくのだと思っています。それを身につけた皆さんは未来の希望だと先生は信じています。
未来は皆さんのものです。そして先生は皆さんの力に大きな期待をしています。
皆さんの未来に幸多からんことをお祈りしています。
頑張ってください。