先に述べたように三つ以下の数字については、人間やさまざまな動物はほとんど瞬時に数を認識することができます。しかし人間はそれを超えて四つ以上の数字を際限なく認識することができます。このことに関連した次のような実験があります。
被験者にドットをランダムに配置したスライドを見せてドットの数を答えてもらう実験をするとドットが一つの時と二つの時は答えるまでに要する時間は、ほぼ同じで三つの時のやや長くなるだけだが、四つ以上になると急に時間がかかるようになるというのです(文献?)。どうやら私たちの脳が、三つ以下の数を扱う方法は大きな数に対処する方法とは違うようです。
ところでみなさんは子供の時に初めて数のことを教わった時のことを覚えていますか。おそらくそれは、身近にいる人、それはご両親かもしれませんが、から「ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、・・・」と数え上げていくこと(カウンティング)を習ったのではないでしょうか。ただ子供を観察してみると「ひとつ、ふたつ、みっつ」とカウンティングを憶えた子供でも必ずしも4以上のものを区別できるとは限らないようです。一般的にカウンティングを憶えた三歳児に自分のおもちゃとかぞえさせると「いち、に、さん、」と、よどみなくかぞえることはできます。しかしおもちゃはいくつあるかとたずねるとなんとも頼りない答えしか返ってきません。この年齢の子供は、カウンティングと「いくつあるの?」という質問の答えを関連付けることがきちんとできないようです。しかし四歳くらいになるとカウンティングと「いくつ?」の関連を理解できるようになります(文献3, 187頁)。
(「数学する遺伝子」:これを理解するには、ある集まりの中にあるものを数える時、数える順番は問題にはならないと言うことを認識しなくてはならない。)
数字を表す英語の単語digitsの語源はラテン語で親指以外の指を表すdigitusという語に起源を持つそうです。それから小学生の子供に(大人でも)計算をしているとき、気がつかないうちに指を使ってしまうようです。どうもカウンティングと指の間には強い関係があるようです。この辺りのことについては脳科学の観点から次のようなことが言えます。
一般的な人が計算を実行する時に、最も強い活動性が見られる脳の領域は左の頭頂葉と呼ばれる場所にあります。ところでこの領域は右手の指をコントロールする領域でもあります(文献4, 335頁)。これらの二つの領域に強いつながりがあることは例えば左頭頂葉に損傷がある人を観察することでわかります。このような患者は、指を認知できないゲルストマン症候群と呼ばれる症状を示します(参考文献2, 4)。この障害では指に触られた時にそれがどの指なのかわからない、と同時に簡単な足し算もできない、二つの数字のどちらが大きいかわからない、といった症状が出るそうです。
参考文献
1. キース・デブリン「数学する遺伝子」
2. https://h-navi.jp/column/article/35026466 (ゲルストマン症候群について)