2016年7月18日月曜日

数学とユダヤ人(2)

さて私は1958年生まれで物心ついたころはこの宇宙開発競争のまっただなかで子供心に新聞の一面に掲載される新しい展開にこころが踊ったものです。そしてこの競争のハイライトである1969年のアポロ11号の月面着陸と二人の宇宙飛行士の船外活動の様子を朝早くにテレビの実況で見たことは今でもはっきりとおぼえています。その後両国の経済状態の悪化を背景にして1989年冷戦が終結これをきっかけに1991年にソ連が解体することになるのです。さてこの宇宙開発競争が節目を超えた1970年代のソ連の内情については「停滞の時代」と呼ばれる時代であったことが明らかになっています。(技術的にもアメリカを中心としたインターネット等の技術革新に完全に遅れをとったのでした。)
マーシャ・ガッセン著の「完全なる証明」(訳青木薫)はこの停滞の時代でのソ連での子どもたちの生活を、著者自身の体験や詳細なインタビューに基づいて具体的に記述しています。国家の方針により全国に建設された同じ間取りの家から、これまた同じ校舎の学校に同じ時間に毎日通い、同じ授業を受け、最終的には皆同じ評価がなされる。これが毎年繰り返される生活をガッセンは「これほどつまらないものが、この世にあるだろうか?」と述べています。ここでは全ての生徒が画一的に育つ事が期待され、人より優れた能力を見せることは悪とみなされていたのです。但し、このような時代であっても、どうしてもそのような生活に馴染むことのできない、好ましくない子どもたち(「みにくいアヒルの子」と例えられていました)がいました。そのような生徒の中には数学に関する才能を持った子どもたちがいたのですが、それと同時に中央の方針に逆らってもその子どもたちの才能を伸ばすことに尽くした先生たちもいました。