さて今年もいよいよ終わろうとしていますが皆さんにはどんな一年でしたか?
良い年でしたか?
本当に今年はいろんなことがありましたが先生がまず考えたのは、まる2年以上続いてきたコロナ感染症がようやく落ち着いてきたことです。
おかげで3年ぶりに水泳ができたり臨海合宿ができたり、6学年が揃って運動会や音楽会やなかよし集会ができたりできました。先生はとても嬉しかったです。
ところで、このコロナの流行を抑えてくれたのが、ワクチンです。今年になってみんながいろんな行事ができるようになったのもこのワクチンのおかげです。
今日はこのワクチンのお話をしたいと思います。
ワクチンというのは、ある決まった薬の名前ではなく病気にかかりにくくしたり、病気にかかっても軽くて済むようにする方法のことです。人は、なぜ病気になるのかというとウイルスなどの病原菌が体に入ってきて、悪さをするからです。
これまでのワクチンというのはこ病原菌を人間が育てて、それからその病気の元になる病原菌を弱らせてわざと人間の体に入れてやります。そうすると、体は弱った病原菌と戦って病気と戦う方法を覚えます。そうやって病原菌と戦う方法を覚えると、本当の病原菌が入ってきた時にそれと戦う方法を知っているので病気にかからなくなるか、かかっても軽くて済むというわけです。
ところでこの「弱った病原菌を作る」というのはとても手間がかかる作業で普通は新しいワクチンを作るのは3年はかかると言われています。でもコロナのワクチンは1年もかからず出来上がりみんなコロナワクチンの注射を受けることができました。
なぜこんなに早くワクチンができたかというと、カタリン・カリコ博士という人が研究していたmRNAというこれまでとは全然違った方法を使ってワクチンを作ったからです。
実は今年の3月の全校集会で先生はカリコ博士のお話をしています。
でもそのことを憶えていない人も多いと思うのでもう一度カリコ博士のことを紹介させてもらいますね。カリコというのはあまり聞いたことがない名前だと思います。カリコ博士はハンガリーという国で生まれました。年齢は先生よりもすこし歳上(1955年生まれ)です。カリコ博士のお父さんは肉屋さんでお母さんは事務員として働いていました。
普通のお家の生まれだったんですね。その頃のハンガリーはあまり豊かな国ではありませんでした。カリコ博士のおうちも貧乏でした。家には部屋は一つしかなくてお風呂も水道もない、そんな生活でした。
そんな具合でしたからカリコ博士は本を読んだりするような普通のお勉強はしたくてもできなかったと思います。でもお家の周りにはたくさんの自然がありました。カリコ博士は草や木、動物たちがどのように生まれて、成長してそして死んでいくのか一人で観察してそのことについて自分なりに考えていたそうです。自分の周りにある自然をみて自分で考える、ということをずっとし続けました。
やがて高校生になった博士はトート先生という生物の先生に出逢います。トート先生は高校生になったカリコ博士が自然を観察する素晴らしい力を持っていることを見抜いて博士の発見を発表するためにいろんなコンテストに出場するお手伝いをしてくれました。博士はトート先生の期待に応えてコンテストで素晴らしい成績をあげました。
そしてトート先生が高校生のカリコ博士にとっても大切なことを教えてくれました。それは「誰かの頭で考え、誰かの目で見るのではなく、自分の頭と目で見ることが大切だ」ということです。
普通勉強というと、新しい知識を本を読んだり誰かに教わったりすることだと思うのではないでしょうか。トート先生の専門の生物学ではメンデルやフレミングという素晴らしい研究者のお話を通して本当に大切なことは何か教えてくれました。
遺伝の研究をしたメンデルは何年もえんどう豆を自分の目で観察し続けて「メンデルの法則」を発見しました。
フレミングは悪い細菌を培養している皿の中にたまたまカビが紛れ込んで、それが細菌を殺しているのに気がついてこれが元になってペニシリンという薬が作られそのおかげでたくさんの人の命が救われました。
このように科学の発見というのは、自分の目でものを見た人が成し遂げることができるものなのだ、ということをトート先生はカリコ博士に教えてくれたのです。
ところで今年は先生はみんなが自由研究の発表をしている様子を見せてもらうことができました。そこでは皆んなが、自分の目で見て、感じたことを言葉にして友達や先生に伝えている姿を見ることができました。
みんなはトート先生からカリコ博士が学んだように本当に素晴らしいことを勉強しているんだ、と思いました。
さて今年の10月にノーベル生理学・医学賞の受賞者としてカリコ博士が選ばれました。
それをきいた先生は皆さんの中からもノーベル賞を取れるような素晴らしい仕事をしてくれる人が出てくるかもしれないと思いました。そしてそんなみなさんと一緒の学校にいられること、これに気付けたことがが先生にとっては今年の嬉しい気づきの一つでした。あまりに嬉しかったので今日みんなに紹介させてもらいました。
どうかみんなもぜひ振り返りをしてもらいたいと思います。そして今年が皆にとっていい一年だだったことに気がついてくれたらいいなと思います。
そして新しい年が皆にとって素晴らしい年になりますように。
これで先生のお話を終わります。